研究課題/領域番号 |
25860275
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
吉本 多一郎 自治医科大学, 医学部, 助教 (20634166)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | non-coding RNA / EMT / 肺腺癌 |
研究概要 |
本研究の目的は、肺腺癌進展、特に上皮間葉転換上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal transition, 以下EMT)におけるnon-coding RNAの役割を解析することである。これまで研究代表者の所属する研究室では、肺腺癌細胞40株の遺伝子発現データを解析し、肺腺癌が、分化マーカー(TTF-1, MUC1, CK7)を高発現するGroup1 腺癌(Bronchial epithelial phenotype)と、分化マーカーの発現が低く、EMT関連マーカーの発現が高いGroup2 腺癌(EMT phenotype)の2群に分類できることを見出した。 本研究では、まずこれらの細胞株を用いてnon-coding RNAの網羅的解析を行った。具体的には上述した肺腺癌細胞株のうち、Group1(高分化群)腺癌細胞株8株と、Group2(低分化群)腺癌細胞株7株から抽出したtotalRNAを、並列型シーケンサーを用いてncRNA分画のトランスクリプトームシーケンシング行い、網羅的発現解析を行った。これは、共同研究者の東京医科歯科大学ゲノム病理学分野教授の石川俊平氏に依頼した。 その結果、2700のnon-coding RNAのうち、Group2(低分化群)でGroup1(高分化群)よりも100倍以上発現の低下がみられた遺伝子が17個、反対に100倍以上発現亢進がみられた遺伝子が9個抽出できた。現在、publish available dataから、これら候補non-coding RNAについてdata miningを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肺腺癌細胞株を用いたnon-coding RNAの発現解析は、概ね順調に進んだが、その結果得られたデータの解析に若干時間がかかっている。 理由としては、膨大な解析データが得られたため、個々のnon-coding RNAについて、既報の機能解析情報を詳細に把握する作業が想定外に時間がかかっているためである。 今後はある程度候補となるnon-coding RNAに焦点を絞り解析を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、解析結果をもとに、有望なnon-coding RNAについて、shRNAによるKnock Down、あるいはベクターを用いた強制発現により、以下のような機能解析を行う予定である。 (A) In vitroにて、細胞増殖、apoptosis, invasion assay等を行う。 (B) In vivo での効果は、NON/SCIDマウスへの皮下あるいは胸腔内での移植により解析する。 さらに、凍結肺腺癌組織についても、これらのnon-coding RNAの発現に実際に差があるか解析を進める。この際、組織亜型、分化度、核異型などの組織学的解析も併せて行う予定である。また、肺腺癌組織でのEMT形質はE-cadherinの免疫染色により評価する予定である(CK7, MUC1の染色も行い参考にする)。 さらに、長鎖non-coding RNAの発現に差が見られた場合は、それらがこれまで報告されてきたようにヒストン修飾により起こっているものであるのか、Dlx2 family、HOX familyのpromoter領域のヒストン修飾をCHIP法により部位特異的に検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はnon-coding RNAの抽出、解析が中心であり、想定していた細胞実験に必要な物品の購入がなかったため。 候補となるnon-coding RNAを絞り込み、細胞実験へ進む予定である。順調であれば手術検体を用いた解析も行う予定である。
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