研究実績の概要 |
本研究の目的は、肺腺癌進展、特に上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal transition, 以下EMT)におけるnon-coding RNA (以下ncRNA)の役割を解析することである。当研究室では肺腺癌の多彩な形質をよく反映した細胞株40株のパネル(代表的なdriver mutationを網羅し、発現形質の違いに基づいて上皮型と間葉型に大別できる)を用いてこれまで研究を展開してきた。 昨年度までに、これらの細胞株のうち15株(上皮型細胞株5株、間葉型細胞株10株)から抽出したtotal RNAを並列型シーケンサーによりncRNA分画のトランスクリプトームシーケンシングを行い、網羅的に発現を解析した(これは共同研究者の東京医科歯科大学ゲノム病理学分野 石川俊平教授に依頼した)。 その結果、上皮型細胞株と間葉型細胞株で差が見られたncRNAのうち、現在まで有望な12個のncRNAに候補を絞った。これらを40株のパネルすべてを用いてTaqman RT-PCR法で定量的発現解析を行った。その結果、12個のうち大半のncRNAは網羅的発現解析と同様、上皮型と間葉型で発現に差が見られた。 現在はさらなる検証のため、実際のヒト肺腺癌切除症例(凍結検体)を用いて、これらncRNAの発現量の解析の準備を行っている。それにより有力な候補と思われるncRNAについては、今後、機能解析(RNAiによるknock down, あるいはベクターを用いた強制発現により細胞形態や発現形質、細胞増殖能、apoptosis、浸潤能などに影響がでるか)を進める予定である。
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