研究実績の概要 |
小腸もしくは大腸に発生する予後不良なT細胞リンパ腫である腸管症型T細胞リンパ腫(Enteropathy-type T-cell lymphoma, EATL)はCeliac病を基盤として発生するTypeⅠとde novoに発生するTypeⅡに分類され、本邦のEATLは欧州と異なりほとんどがTypeⅡとされる。免疫形質や遺伝子異常に関して欧州例との異同を明らかにするために2014年は本邦のEATL20例に対して、臨床病理学的、免疫組織化学的、遺伝子学的解析を前年度に引き続き行った。 20例は35歳~81歳、男性:女性=12:8、病変の分布は小腸17例、大腸2例、小腸+大腸1例であった。形態学的に腫瘍細胞は中~大型13例、小~中型5例、中型5例であった。免疫組織化学は全例CD3ε(+), CD5(-), TIA-1(+)を示し、TCR-β,2/20; TCR-γ,7/20; TCR-γδ,10/20, βγ-double negative,5/20であった。その他CD2,12/20; CD4,2/20; CD7,19/20; CD8,16/20; CD56,17/20; Granzyme B,5/20; HVEM,19/20; BTLA,4/20であった。EBウイルスRNAに対するin situ hybridization(ISH) は全例陰性であった。Array comparative genomic hybridization(aCGH)を8例で行い6例に9q34 gainと19q13 lossを認めた。FISHでは9q34 gain(15/20), 1q21 gain(12/18), 6q16 gain(6/16), 9q33 gain(6/15)であった。 本邦のEATLは免疫組織学的にCD8+, CD56+を示すものが多くTypeⅡの性質を持つことが示唆されたが、腫瘍細胞の大きさにはばらつきが見られ、欧州のTypeⅡと異なっていた。TypeⅠおよびTypeⅡで高頻度に認める9q34の増幅を認めた。TypeⅡに特徴的とされる8q24 gainは目立った異常ではなかった。
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