研究概要 |
慢性C型肝炎では線維化の進行により肝硬変から高頻度で肝がんを発症する。線維化の進行は肝がんの発症率と相関することから発がんの防止には、C型肝炎ウイルス(HCV)の完全な排除と、線維化の有効な制御方法の開発が必須である。これまでに肝炎の治療に対して数多くの核酸医薬の研究が行われているが、未だ実現化には至っていない。これらの問題点は核酸医薬を肝細胞へ効率良く送達するドラッグデリバリーシステム(DDS)にある。そこで、核酸による慢性C型肝炎の治療を実現するため、本研究ではHCVの排除と慢性肝炎に伴う線維化の治療を目的とした新規の核酸医薬とDDSの開発を目指した。初めに、HCVのエンベロープを基礎にした改変型エクソソーム産生細胞を樹立するために、HCVのエンベロープ発現ベクターの作製を行った。HCVの全長DNAより、HCVのエンベロープを構成する5‘側のCore, E1, E2, P7, NS2領域をサブクローニングし、エンベロープベクターを作製した。エンベロープベクターは、肝癌細胞株Huh-7およびヒト胎児腎細胞HEK293に導入し、HCVエンベロープを恒常的に発現する細胞株の樹立を試みた。結果、Huh-7細胞と比較して、HEK293細胞で強いエンベロープタンパク質の発現を確認した。また、HCVの全長DNAより、HCVの複製を担う分子およびパッケージングシグナルを有する3’側のNS3, NS4A, NS4B, NS5A, NS5B領域をサブクローニングし、パッケージングベクターを作製した。以上の実験から、改変型エクソソーム発現HEK293細胞の樹立および、核酸医薬を改変型エクソソームに内包するためのパッケージングベクターの作製に成功した。
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