研究概要 |
悪性リンパ腫のWHO分類(第4版)においてB細胞性リンパ腫と比較して、T細胞性リンパ腫は臨床病理学的特徴に則した分類が依然として不十分である。特に、末梢性T細胞性リンパ腫, 非特異型(PTCL, NOS)の症例は除外診断によって診断が為されるという性質により混沌とした疾患群とされており臨床病理学的特徴を考慮した細分類が必要であると思われた。本研究ではT細胞のsubtypeを決定する転写因子の免疫染色を行い、PTCL, NOSを臨床的特徴や病理学的特徴をふまえてT細胞のサブタイプにより細分類を行った。 染色を行ったところ腫瘍細胞は複数の因子に陽性となったため、腫瘍細胞の染色強度と陽性細胞の割合からスコアを算出して各症例をサブタイプごとに分類した。CD4陽性T細胞を主体とした分類の結果、全体の約半数がTh1もしくはTh2に分類された。臨床所見の検討の結果、年齢、性別、B症状、皮疹、肝腫大、脾腫、performance status、骨髄浸潤、末梢血浸潤、international prognostic index、白血球数、ヘモグロビン値、血小板数、高γグロブリン血症、高カルシウム血症、CRP上昇に差はみられなかったがTh1の症例群と比較してTh2の症例群で節外病変が少ない、Stage III or IVが少ない、PIT Scoreが高い、LDH上昇例が多い、CR率が高いという傾向がみられ、病理学的検討では形質細胞浸潤が多いという傾向がみられた。予後解析ではTh2の症例群でTh1の症例群と比較して有意に予後が良い結果となった。 今回の結果により、これまで細分化されていなかった末梢性T細胞性リンパ腫、非特異型の症例がT細胞のsubtypeの違いによって臨床病理学的に細分化される可能性が示唆された。
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