研究課題
α2-マクログロブリン/C3,C4,C5ファミリーに属するGPIアンカー型膜タンパク質CD109は,肺・口腔・食道・子宮頸部の扁平上皮癌,膀胱尿路上皮癌等で発現が増強していることが明らかとなっており,癌関連遺伝子と考えられている.一方で,非上皮性腫瘍におけるCD109の発現に関する報告は少ない.本研究では,CD109ノックアウトマウスおよび種々の細胞株を用いて,非上皮性組織および非上皮性腫瘍におけるCD109の役割を検討した.これまでに,マウスより得た初代培養骨芽細胞および破骨細胞を用いて,CD109が破骨細胞の細胞融合に関与していることを示唆する結果が得られているが,加えて複数の骨芽細胞系細胞株においてCD109が強く発現していることが明らかになったことから,非上皮性組織としての骨におけるCD109の生理学的な機能や,骨芽細胞由来非上皮性腫瘍である骨肉腫におけるCD109の役割の解析を進めた.骨芽細胞系細胞株であるMG-63やU-2 OSに加え,骨芽細胞の前駆細胞と考えられている間葉系間質細胞由来の細胞株であるASC52teloおよびUE7T-13においてもCD109の発現が確認された.また,間葉系細胞の分化のモデル細胞として知られるC3H10T1/2を用いて骨芽細胞への分化誘導を行ったところ,誘導初期に最もCD109の発現が増強することが明らかとなり,CD109が間質細胞の骨芽細胞への分化に関与している可能性が示唆された.また,ヒト骨肉腫の組織切片を用いてCD109の免疫染色を行っており,その発現パターンを解析中である.現在,上記の細胞株およびヒト検体を用いて,非上皮性組織および非上皮性腫瘍におけるCD109の役割の解析を継続している.
2: おおむね順調に進展している
研究計画に沿ってヒト骨肉腫の組織切片を用いてCD109の発現パターンを解析中であるが,予後との関係については現在のところ不明である.当初予想されたCD109とCD81の相関については,間接的なものに留まっているが,エクソソームにおけるCD109の役割に関する興味深い結果が得られつつあり,おおむね順調に進展している.
初代培養細胞を用いた検討により,CD109が骨芽細胞と破骨細胞の共培養系において,破骨細胞の細胞融合に関わっていることに加えて,CD109が特に骨芽細胞系細胞株において高発現していることから,今後は骨芽細胞およびその前駆細胞とされる間葉系間質細胞,あるいは骨芽細胞系腫瘍である骨肉腫におけるCD109の果たす役割について解析を継続する.
本年度の研究はおおむね順調に進展したものの,ノックアウトマウスの飼育における技術的な問題から,個体レベルでの解析の着手に若干の遅れが生じたため.
マウスを用いた実験に必要な種々の野生型マウスの購入や,マウスの飼育に必要なディスポーザブルケージの購入に使用する予定である.
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