研究課題
若手研究(B)
本研究の目的は、糖代謝異常ゲノムメカニズムを明らかにすることである。糖代謝異常とは、糖尿病または糖尿病にはなっていないが血糖が高めである状態である。発症要因として遺伝因子と環境因子が存在するが、多くについては特定の遺伝子異常はまだ証明されていない。本研究では、まず過剰給餌によるゼブラフィッシュ肥満モデルを作製し、糖代謝異常ゼブラフィッシュの作製を試みた。肥満ゼブラフィッシュの体重、血漿中性脂肪、内臓脂肪量は正常ゼブラフィッシュより有意に増加し、肝臓脂肪の蓄積も確認された。また、ゼブラフィッシュの個別識別を行い、肥満誘導期間中(8週間)2週間ごとに空腹血糖値を測定し、持続血糖モニタリングを行った。正常群の表現型に対し、肥満誘導されたゼブラフィッシュでは、持続的に高い血糖値を表現した個体(High blood glucose, HBG)と、正常群と差がなく安定的に表現した個体(Medium blood glucose, MBG)が分けられた。次に、糖代謝異常ゼブラフィッシュ(HBG)と正常ゼブラフィッシュの肝臓組織からトータルRNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いた網羅的トランスクリプトーム解析(RNA-seq)を行った。抽出した発現変動遺伝子群をヒト先祖遺伝子(Ortholog)に変換し、In silicoにおけるネットワーク解析の結果、脂質代謝や糖質代謝関連パスウエイを中心に変動していたのが明らかになった。なお、有意な発現変動を認めた遺伝子群(P < 0.01)に対して、リアルタイムPCR法によるバリデーション実験を行い、糖代謝調節候補遺伝子を決定した。今後これらの候補遺伝子に対し、遺伝子操作により糖代謝異常との関係についてより詳細な研究を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究は平成25年度の研究実施計画通り遂行されており、特に遅滞はない。また、研究成果も前述の糖代謝調節候補遺伝子が遺伝子操作のターゲットとして見つかっており、おおむね研究計画立案通り順調に進展している。
平成26年度は遺伝子操作により糖代謝に影響を及ばす遺伝子の解明を中心に行う。まず、前述の糖代謝調節候補遺伝子に対し、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(MO)を合成する。次に、MOを肥満モデルゼブラフィッシュの腹腔内へ導入し、糖代謝異常への関与を検証する。また、前述の糖代謝異常モデルに対して試験化合物の経口投与により治癒効果を検証し、糖尿病治療候補薬物スクリーニングを行う。
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