本研究は、食餌性肥満ゼブラフィッシュを用いて、糖代謝異常ゲノムメカニズムを解明することを目的とした。今年度は、1)空腹血糖に影響を及ぼすと予想される遺伝子群の機能解析、および2)ヒト臨床で使用されている糖尿病治療薬が本疾患モデルゼブラフィッシュにおいても有効かどうかの検討を行った。 まず、初年度の次世代シーケンサーを用いた網羅的トランスクリプトーム解析にて抽出された糖代謝異常関連遺伝子群に対し、これらの発現を抑制するためモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(MO)を合成した。次に、週2回各遺伝子のMOを肥満ゼブラフィッシュ腹腔内へ注入し、遺伝子発現抑制実験を行った。投与実験終了時(8週間)に、空腹血糖値の測定を行った。また、糖尿病治療薬を肥満ゼブラフィッシュに投与し、本疾患モデルゼブラフィッシュにおける薬剤応答性を検討した。その結果、1)実験検討した遺伝子のうち、インスリン遺伝子(insa)の発現抑制により空腹時血糖値の有意な上昇を確認した。また、糖尿病の進行に伴い、体重減少傾向も確認した。ゼブラフィッシュにおいても哺乳類同様に、インスリンが耐糖能機能に深く関与していることを証明した。さらにこれまで未報告であった新規候補遺伝子群に対しても同様の実験を行い、その一部に耐糖能機能の改善、コレステロール低下作用を認めた。2)ヒト臨床で使用されている糖尿病治療薬メトホルミン、ピオグリタゾン、グリベンクラミドの腹腔内投与を行い、糖代謝異常への影響を検証した。その結果、メトホルミンとピオグリタゾンは肥満ゼブラフィッシュの血糖値の上昇を抑制し、本肥満ゼブラフィッシュが人間の薬にも反応することを確認した。 以上の結果より、この糖代謝異常症モデルともいえる肥満ゼブラフィッシュの病態メカニズムが、オミックスレベルでのヒトの疾患モデルに十分なりうることを証明した。
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