関節リウマチでは、軟骨や骨組織の破壊により不可逆的な機能障害を生じる。軟骨の破壊には分解酵素を産生することで線維芽細胞様滑膜細胞や軟骨細胞が関与し、骨の破壊には破骨細胞が関与すると考えられている。しかし、不明な点もある。破骨細胞と同様の多核巨細胞の形態を示し、軟骨周囲に存在することから破軟骨細胞と呼ばれる細胞は、その存在する場所から軟骨の分解に関わると考えられているが、その特性は明らかではない。 本研究では、関節リウマチ病変部の多核巨細胞の特徴について免疫染色等で解析するとともに、培養細胞を用いて病変部で認められる細胞と同様の性質をもつ多核巨細胞への分化条件を検討した。 免疫染色の結果、病変部の破軟骨細胞において、軟骨の細胞外基質を構成するプロテオグリカンであるアグリカンを分解する酵素ADAMTS-4およびADAMTS-5の発現が認められた。また、これらの細胞は破骨細胞のマーカーであるTRAPが陽性だった。マウス単球細胞株であるRAW264.7に様々なサイトカインを添加した状態で破骨細胞への分化誘導を行ったところ、TGF-βによりADAMTS-5 mRNAの発現が顕著に亢進することがRT-PCRおよびreal-time PCRにより明らかになった。破骨細胞への分化後にTGF-βで刺激した場合には発現量の増加はわずかであり、未分化のRAW264.7をTGF-βで刺激した場合には発現変化は認められなかった。ヒト末梢血単核球を用いて破骨細胞分化誘導時にサイトカインを添加した実験では、RT-PCRの結果、RAW264.7ほど顕著ではなかったもののTGF-β添加でのみADAMTS-5のバンドが検出できた。 これらのことから、関節リウマチにおいて軟骨を分解する性質をもつ特殊な多核巨細胞である破軟骨細胞への分化がおこること、この細胞は軟骨の分解と骨吸収に働き関節破壊に関与することが示唆された。
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