高脂肪食投与後の耐糖能を指標としたマウスの連続的選抜交配を行い、高脂肪食誘発性の糖尿病を易発するSelectively bred diet-induced glucose intolerance-Prone系(SDG-P系)と、抵抗性を示す-Resistant系(SDG-R系)の2系統を確立した。 選抜交配過程における世代横断的な各種表現型 (血糖値、体重、摂餌量)の観察から、選抜指標である高脂肪食投与後の耐糖能に加えて、摂餌量や体重増加といった付随的な形質も世代が進むごとに系統間の差が拡大しており、本選抜交配によって濃縮された遺伝素因が、糖代謝と摂食制御に関連する因子群であると予想した。 上記の仮説を元に、初年度は両系統マウス間でのインスリン分泌能の差異に関する解析を行い、SDG-P系マウスでは生体および単離膵島レベルでのグルコース応答性インスリン分泌能が遺伝的に低く、膵β細胞におけるGLUT2、PDX-1、SNAREタンパク質群の遺伝子発現の低値がその原因となることを見出した。 最終年度は両系統マウスの摂食行動に関する解析を行い、SDG-P系マウスの摂餌量をSDG-R系に合わせたペアフィーディング実験から、SDG-P系マウスで見られる高脂肪症投与時の体重増加や糖尿病発症が、摂餌量の増加(過食)に起因することを明らかにした。また、両系統マウス間に体重差がない高脂肪食投与初期の時点では、両系統マウス間でのレプチン感受性に差異はなかったが、SDG-P系マウスでは血中レプチン濃度や脂肪組織におけるレプチンの遺伝子発現が低く、低レプチン状態が高脂肪食投与時の過食につながる可能性を見出した。
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