日本産野生由来近交系マウスMSM/Msの発がん抵抗性に着目し、マウス系統間の遺伝的背景効果を利用した順遺伝学的がん感受性/抵抗性遺伝子の探索をDMBA/TPAによる多段階皮膚発がんモデルにより実施した。その結果、これまでにSkin Tumor Modifier of MSM (Stmm)遺伝子座を第7番および4番染色体を含めた複数の染色体上にマップしている。そこで、これらStmm遺伝子座の候補領域を遺伝学的に限定し、がん感受性/抵抗性遺伝子の同定を試みた。特に早期良性腫瘍に対して抵抗性遺伝子座であるStmm1、2および後期良性腫瘍抵抗性遺伝子座のStmm3を中心に解析対象とした。7番染色体および4番染色体のサブコンジェニックマウス系統を用いたマッピングの結果、Stmm1aを約4.5 cM、Stmm1bを約2.3 cMおよびStmm3を約2 cMにまで限定することに成功した。それぞれの結果を2014年にPLoS One誌およびExperimental Animals誌にて報告した。さらにStmm1bについてはin silico解析により、副甲状腺ホルモン(Pth)に着目し解析を進めた。Pth周辺領域をカバーするMSM-BACクローンを皮膚がん感受性系統のFVBに導入したトランスジェニックマウス(MSM-Pth+Tg)を作製した。これらのマウスを用いてDMBA/TPAによる多段階発がん実験を行った結果、MSM-Pth+Tgの平均良性腫瘍数は野生型よりも有意に低下していた。これらのことから、MSMアレル由来のPthが皮膚腫瘍形成を抑制している可能性が予測され、Stmm1bの強力な候補遺伝子であることが示唆された。今後はPthのノックアウトマウスを用いて皮膚発がん実験を行うことで、Pthの皮膚腫瘍抑制機構について明らかにしていきたい。
|