研究実績の概要 |
本年度は、CXCL14と炎症との関連について、自然免疫系を活性化するToll-like レセプター(TLR)の関与を調べた。すると、あるTLRリガンドとCXCL14の共処理で、炎症性サイトカインが非常に強く誘導される事が明らかとなった。これらの発現誘導はマクロファージおよび樹状細胞において見られた。このメカニズムを探るため、このTLRリガンドを蛍光標識した物質の樹状細胞内への取り込みを観察したところ、CXCL14との共処理により、TLRリガンドの細胞内への取り込みが促進されていることがわかった。これらの結果は、TLRリガンドの細胞内への取り込みというこれまで知られていなかった新しいメカニズムでCXCL14が炎症反応を制御している事を示唆している。このメカニズムについて、CXCL14とTLRリガンドの直接の結合があるかどうかを調べるため、CXCL14-biotin選択的修飾タンパク (徳島大学との共同研究により合成: Tsuji, Tanegashima et al., 2015) とTLRリガンドのin vitroでの結合実験を行った。すると、これらの分子は、10-50nMという高親和性で結合することが明らかとなった。また、この結合はヘパリンにより阻害されることから、CXCL14のヘパリン結合サイトが関与する事が示唆された。さらにこのTLRリガンドのin vivo投与実験では、本来投与後に上昇する炎症性サイトカインIL12p40が、CXCL14KOマウスで上昇しないことが明らかとなった。これらの結果から、CXCL14はTLRリガンドと複合体を形成し、この複合体がマクロファージや樹状細胞などの免疫細胞に取り込まれる事により、TLRシグナルを活性化して炎症反応を惹起する事が明らかとなった。
|