研究課題/領域番号 |
25860306
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
谷端 淳 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部, 流動研究員 (00508426)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 筋ジストロフィー / 短縮型ジストロフィン / 細胞内カルシウム濃度 / nNOS / リアノジン受容体 |
研究概要 |
【目的・方法】Duchenne型筋ジストロフィーはdystrophin遺伝子変異が原因で発症し、骨格筋・心筋に重篤な臨床症状を起こす一方で、dystrophin遺伝子のexon45-55を欠損した患者の骨格筋症状はほぼ無症状である。このexon45-55を欠失する短縮型Dys (Δ45-55Dys) の機能的役割を明らかにするため、Ex.45-55を欠失させたdystrophin遺伝子が発現するマウス(Δ45-55Tg )を作出し、mdxマウスと交配させてΔ45-55dystrophinのみが発現するマウス(Δ45-55Tg/mdx)を産出し、Δ45-55dystrophinの機能を検討した。 【結果・考察】Δ45-55Tg/mdxの筋機能を野生型と比較したところ、Δ45-55dystrophin は全長dystrophinとほぼ同等の機能を有する一方で、Δ45-55Tg/mdxでは成長に伴う体重の増加が野生型と比較して緩やかで、20週齢前脛骨筋では重量、平均筋断面積で有意な低下を認めた。Fiber type解析ではΔ45-55Tg/mdxではType 2A線維の増加と、Type 2B線維の萎縮が認められた。その背景としてΔ45-55Tg/mdxでは、一部のnNOSの局在が細胞膜から細胞質に変化しており、細胞質で活性化されたnNOSが筋小胞体のRyR1をニトロシル化し、恒常的に細胞内Ca2+濃度を上昇させることで、筋萎縮や筋線維組成の変化を惹起させるシグナル経路を活性化させていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
exon45-55を欠失させた短縮型ジストロフィンのみを発現するΔ45-55Tg/mdxマウスを作出することができ、ウエスタンブロットにより、タンパク質レベルでの発現を確認した。同マウスを用いて骨格筋・心筋の機能解析を行い、正常マウス・mdxマウスとの比較検討したところ、exon45-55を欠失した短縮型ジストロフィンの機能は全長ジストロフィンと同等の機能を有することを明らかにすることができた。 一方で、Tg/mdxマウスではジストロフィン糖タンパク質複合体に含まれるnNOSの局在が正常マウスとは異なり細胞膜から細胞質に局在を変えていることも明らかにし、細胞質に局在を変えたnNOSが産生するNOが筋小胞体のリアノジン受容体をニトロシル化すること、さらにこのリアノジン受容体のニトロシル化により筋小胞体から細胞質へカルシウムの放出が増加し、筋萎縮・筋線維タイプの変化が惹起することを明らかにすることができた。 以上より、exon45-55を欠失した短縮型ジストロフィンの機能だけでなく、この短縮型ジストロフィンが発現することによっておこる2次的な現象を元に、生体におけるNOと細胞質内カルシウム濃度の調節機構を明らかできる可能性まで示せたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
exon45-55を欠失したジストロフィンが発現しているTg/mdxでは筋細胞質のカルシウム濃度が増加していることを明らかにすることができたが、この現象はニトロシル化されたリアノジン受容体のみに起因するのか、同じく筋小胞体膜の局在するIP3受容体や、筋細胞膜に局在するL-type カルシウムチャネルも関与するのか否かを阻害剤等を用いてin vitroレベルで検討する。また、Duchenne型筋ジストロフィーやBecker型筋ジストロフィー患者の筋細胞を用いて、リアノジン受容体のニトロシル化や細胞内カルシウム濃度の程度と病態との関連をより詳細に検討したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
必要試薬・消耗品等が研究室内の在庫で賄うことができたため、購入予定数よりも少なくて済んだことに合わせて、学会の参加を次年度多くの学会に参加できるように計画を変更したため。 国内学会2回分の旅費に充てる。 併せて、ヒトの筋細胞を用いた研究を計画しているために新たに培地等の実験消耗品を購入する予定である。
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