研究課題
Duchenne型筋ジストロフィーはdystrophin (Dys) 遺伝子変異が原因で発症し、骨格筋・心筋に重篤な臨床症状を起こす一方で、Dys遺伝子のexon45-55 (Ex.45-55) を欠損した患者の骨格筋症状はほぼ無症状である。このEx.45-55を欠失する短縮型Dys (Δ45-55Dys) の機能を明らかにするため、Ex.45-55を欠失させたDys遺伝子が発現するマウス(ΔTg)を作出し、mdxマウスと交配させてΔ45-55Dysのみが発現するマウス(Tg/mdx)を産出し、その機能を検討した。Tg/mdxの筋病理所見・筋機能を野生型、mdxマウスと比較したところ、Tg/mdx骨格筋ではジストロフィン糖タンパク質複合体(DGC)の発現が回復しており、Δ45-55Dys は全長Dysとほぼ同等の機能を有していた。一方で、DGCに含まれるnNOSの局在がTg/mdxでは細胞膜から細胞質へ変化しており、細胞質で活性化されたnNOSが筋小胞体(SR)のリアノジン受容体 (RyR1) をニトロシル化し、mdxマウスと同様に恒常的に細胞内Ca2+濃度を上昇させた。しかし、RyR1のアゴニストを用いてRyR1の機能を検討したところ、刺激に対するTg/mdxのRyR1機能はmdxマウスと異なり正常マウスと同程度維持されていた。そこで、SRにCa2+を取り込む役割を担うSERCAの機能を比較したところTg/mdxのSERCA活性はmdxマウスより有意に回復していた。以上よりTg/mdxではSERCAの機能が維持され、SRにCa2+を取り込むことで、刺激に対するRyR1応答性が正常マウスと同程度維持されていたと考えられる。このことは筋細胞膜の安定性だけでなくSRを含む細胞内小器官の機能が筋ジストロフィーの病態と治療を考えるうえで重要であることを初めて示した。
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