研究課題/領域番号 |
25860307
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
千葉 朋希 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任研究員 (00645830)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 非コードRNA |
研究概要 |
炎症性サイトカインの転写調節におけるLong non-coding RNA(LncRNA)の役割を理解するためにIL-1βのアンチセンス鎖にコードされるLncRNA(IL1b-asRNA)に注目し、研究を進めた。IL-1b-asRNAの転写産物の全容を解明するために5’RACEおよび3’RACEにより転写開始点および転写終結点を解析したところ、これまでに報告のない新たなエクソン領域を発見した。IL1b-asRNAはMyd88をアダプターとして用いるToll-like receptorのリガンドによる刺激により強く誘導されることを見出した。また、その発現にIL-1βと同様にNF-kappaB依存的であることが明らかになった。IL1b-asRNAを標的とするshRNAを恒常的に発現するマクロマージ細胞株であるRAW264.7細胞を樹立し、LPS刺激により炎症性サイトカインの発現を解析したところ、IL-1βのみならずIL-6やTNFαなどの炎症性サイトカインの発現低下が見られた。さらにマイクロアレイにより解析した結果、IL-6やGM-CSFなどの発現が顕著に減少していた。これら遺伝子はクロマチンリモデリングを伴うエピジェネティックな調節機構により制御されることが知られていることからIL1b-asRNAがエピジェネティックな調節を介して、ある種の炎症性サイトカインの産生を調節していることが示唆される。詳細なメカニズムを解明するために抗RNAポリメラーゼII(RNA polII)抗体を用いたクロマチン免疫沈降を行なったところ、IL-6やGM-CSFのプロモーター領域およびエクソン領域へのRNA polIIの結合は顕著に減少していたことから、IL1b-asRNAは炎症性サイトカインの発現を転写レベルにおいて制御していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の計画として転写調節への寄与の解明に関してはIL-1βのアンチセンス鎖にコードされるLncRNA(IL1b-asRNA)がRNAポリメラーゼIIの転写開始点近傍への動因に寄与していることを明らかにできた。また、IL1b-asRNAの発現制御機構としてNF-kappaBが最も重要であることを明らかにした。IL1b-asRNAにより制御される遺伝子としてsecondary response geneと呼ばれる一連の遺伝子群をマイクロアレイ解析により同定し、qPCRやELISAにより、それら遺伝子の発現が低下していることを確認することができた。一方でIL1b-asRNAの機能領域の同定に関してはスプライスバリアントや転写産物の間で機能的な相違は見出せていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は生体内(in vivo)における役割の解明に向けて研究を推進する。すでに人工ヌクレアーゼであるTALENやCRISPR/Cas9を用いた遺伝子改変マウスやトランスポザーゼを用いた高効率なトランスジェニックマウスの作製に着手しており、これらのマウスを用いて実的自己免疫性脳脊炎(EAE)モデル等を用いた評価を行なう。また、分子メカニズムとしてIL1b-asRNAの結合分子の同定をRNA免疫沈降法などを駆使して行ない、転写調節における役割をより明確にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
事務手続き上、次年度の使用額になった事が理由として挙げられる。 事務手続き上の理由であり、計画通りに使用した。
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