三日熱マラリア原虫は系統進化学的研究から、マカクサル類を宿主とするサルマラリア原虫の宿主転換により生じたと考えられている。しかしながら、ヒトとマカクサル類に感染可能な近縁サルマラリア原虫とは異なり、三日熱マラリア原虫はヒトにしか感染せず、マカクサル類への感染能を失っている。この三日熱マラリア原虫の宿主特異性を生み出している分子基盤の解明は、新たな予防法および治療法の開発にあたり、有用な知見と成り得る。本研究では、原虫の持つリガンド分子DBPと、宿主赤血球表面上の受容体分子であるDuffy抗原の関係に着目して実験を行った。それにより、DBPのN末から274、356、363番目の3箇所のアミノ酸残基、およびDuffy抗原のN末から22番目のアミノ酸残基が三日熱マラリア原虫のヒト特異的な感染性に関与していることを示唆する結果を得た。これらの結果から、サルマラリア原虫類とその宿主であるヒト・サル類の両要因が宿主特異性に影響していることが明らかとなった。
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