平成25年度は嘔吐活性欠失型SEAレパートリーを作製することを主な研究内容とした。 まず、嘔吐活性部位についてこれまで報告された立体構造をもとに予想した。予想の観点として、SEAと嘔吐活性のないスーパー抗原(TSST-1、Spe)との違い、SEAと嘔吐活性のあるエンテロトキシン(SEB、SEC、SEEなど)との共通点を、Protein Data Base (PDB)に報告された構造をもとにコンピューター上で解析した。その結果、a1へリックス(アミノ酸残基15から17番)、a3へリックス(同74から80番)、ならびにa4ヘリックスとb9シートに挟まれたショートヘリックス(同173から176番)の3つの構造が、嘔吐活性を持つスーパー抗原では保持され、スーパー抗原を持たないTSST-1ならびにSpeには存在しないことが明らかになった。このことから、これらの構造を欠失あるいは置換、あるいはアスパラギン酸、リジンなどイオン性が高くタンパク質の結合に重要な役割を果たす可能性が高いアミノ酸をアラニンに置換した組換えSEAレパートリーを作製し、嘔吐活性ならびにスーパー抗原活性を評価することとした。 変異導入は、SEA発現プラスミドを鋳型として行い、大腸菌内で変異SEAを大量調製し、グルタチオンアフィニティクロマトグラフィにより精製を行った。このうち、多くの組換えSEAは封入体として回収されたが、75番目のアスパラギン酸をアラニンに置換した変異組換えSEA(D75A)は、安定に組換えSEAが精製された。今後、D75Aについて嘔吐活性ならびにスーパー抗原活性を評価し、構造との相関について検討していくことが期待される。
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