研究課題/領域番号 |
25860319
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菅原 庸 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教 (70452464)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖鎖 |
研究概要 |
ボツリヌス神経毒素は複数のタンパク質分子からなる複合体として存在し、神経毒素の抗原性などにより7つの血清型に大別される。本毒素を経口摂取することにより引き起こされるボツリヌス食中毒の場合には、毒素が消化管を通り抜けて血流に入り、最終的には神経末端に達することにより毒性を発揮するが、その輸送過程の詳細についてはほとんどわかっていない。我々は毒素の構成タンパク質の一つであるヘマグルチニン(HA)が腸管上皮細胞に対して特異的な生物活性を示すことを見いだし、その活性の毒素輸送における役割に着目して研究を進めてきた。本研究では、細胞障害活性を有するC型ボツリヌスHA(C型HA)について、その活性の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。 初年度はC型HAの上皮細胞上の標的分子を明らかにすることを目的として解析を行った。C型HAは糖鎖を認識することが以前より知られており、我々が見いだした細胞障害活性も糖鎖結合に依存することをすでに明らかにしている。そこで糖鎖アレイにより、実際にどのような糖鎖に結合するのかを検討したところ、シアル酸を含む特定の糖鎖モチーフのみに結合することを見いだした。我々はC型HAに感受性を示す細胞から、感受性を失った細胞株を複数単離することに成功している。そこでこれらの非感受性株について上記の糖鎖の生合成に関わる酵素の発現を調べたところ、すべての株においてある一つの酵素の発現が消失していることがわかった。その酵素をクローニングしこれらの細胞株に発現させたところ、C型HAに対する感受性が復帰した。以上の結果から、今回見いだした糖鎖モチーフがC型HAの機能的な標的分子であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたC型HAの標的分子の同定という点については、活性の発現を左右する決定的な分子を明らかにすることができた。この分子以外にも標的分子が存在する可能性も考えられるが、現在得られている結果をもとに、次の課題に取り組むことができている。従って、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、C型HAの標的分子を明らかにすることができた。今後は、C型HAがその標的分子に結合することにより、なぜ細胞障害が引き起こされるのかを明らかにしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
C型HAの標的分子を同定することを目的として、当初は複数の研究手法を用いることを計画し、そのそれぞれを遂行するための経費を計上していた。しかしながら、実際にはすべてを用いることなくその目標が達成されたために、次年度使用額が生じた。 次年度に繰り越した助成金、および翌年分として請求した助成金については、C型HAが標的分子に結合することにより引き起こされる現象についての細胞生物学的・分子生物学的解析のために支出する予定である。具体的には、明らかにした標的分子と関わりがあることが知られているタンパク質等の関与について調べるために、阻害剤や抗体を購入するための物品費としておもに支出する予定である。
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