研究課題
若手研究(B)
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は,食中毒の原因ともなる致死性のボツリヌス毒素を産生し,その神経毒素タンパク質(Botulinum neurotoxin; BoNT, 150 kDa)の血清型から,A~G 型の7 型に分類される。通常,BoNTは4 種の無毒タンパク質群と結合しタンパク質複合体を形成している。この無毒タンパク質群のうち血球凝集素(Hemagglutinin; HA)は3 種のサブユニット(HA-17, HA-33, HA-70)から構成されており,毒素が動物に経口摂取された際に腸管細胞に結合し,毒素の生体内への吸収を促進すると考えられている。申請者らは、HA の複合体構造と機能を解析し,ボツリヌス毒素の構造ならびに毒素の生体内吸収機構を解明することを目的としている。本研究では、培養液上清より精製した毒素複合体から、HA-17/HA-33複合体およびHA-70を分離精製し、HA-70分子上に存在するHA-17/HA-33の結合部位についてFar western blot法で検討した。プロテアーゼで限定分解したHA-70断片へのHA-17/HA-33の結合を実験した結果、623残基で構成されるHA-70のC末端側領域であるTyr329からSer623の範囲内にHA-17/HA-33の結合部位が存在することが明らかとなった。今回の実験結果および既報のデータをもとに、バイオインフォマティクスの手法を用いてHA複合体の立体構造を予測した。この結果は、ボツリヌス毒素の構造と機能を理解する上で、重要な知見になり得ると思われる。
2: おおむね順調に進展している
研究目的の一つとして挙げたHA複合体の立体構造解析について、サブユニット間結合部位に関する新たな知見を得て、さらにin vitro実験データに基づいた複合体構造予測を行うことができた。今後は、HAサブユニットの種々の活性や機能に関する実験を行いながら、構造との相関についても検討していきたい。
HAサブユニットの組換え発現系を構築し、各サブユニットの毒性や細胞への作用などを含めた種々の活性を実験していく。また、複合体構造データを用いた溶媒中での複合体構造の動的な挙動についても解析していきたい。
今年度は消耗品等の購入において、当初計画していたよりも安価で購入できたものなどもあり、全額を使用せずに次年度に持ち越す分が生じた。次年度請求分ち合わせ、有効に使用する。大腸菌の組換え実験、タンパク質の精製、細胞培養、その他実験遂行上必要となる消耗品類の購入に使用する。また、学会や研究協力者との打ち合わせのための旅費に使用し、研究成果を発表した際は、その論文投稿料にも使用する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
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