ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は食中毒の原因となる致死性の神経毒素を産生する。毒素は5種類のサブユニットが結合したタンパク質複合体である。毒性の本体である神経毒素は無毒タンパク質群と結合している。無毒タンパク質群のうち、血球凝集素(Hemagglutinin: HA)は3種のサブユニット(HA-70、HA-30、HA-17)から構成されており、毒素が動物に経口摂取された際に小腸上皮細胞に結合して毒素の生体内への吸収を促進していると考えられている。本研究では、毒素の腸管からの吸収機構を明らかにし医療等への応用につなげるために、毒素複合体のサブユニット間相互作用部位の同定を行った。生化学的実験およびバイオインフォマティクス的手法を用いた種々の実験の結果、HAサブユニット間の相互作用部位を明らかに、既報の実験結果なども合わせて毒素複合体の立体構造モデルを提唱した。
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