研究課題/領域番号 |
25860323
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
日根野谷 淳 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (20548490)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞膨化致死毒素 / CDT / 大腸菌 / ファージ |
研究実績の概要 |
平成26年度は宿主の血清型間でCDT-Iファージの安定性が異なる、即ちspontaneous inductionのレベルが異なる原因を明らかにするため、(1) CDT-Iファージ誘導経路の同定、(2) CDT-Iファージ誘導とrestriction-modification systemとの関係の検証、(3) spontaneous inductionが起こるO群血清型O142のtransposon mutant libraryを作製し、ファージ誘導が消失クローンの同定および、そのトランスポゾンの挿入部位を特定することによりファージ誘導に関連する宿主因子の探索を試み、以下の結果を得た。 (1) CDT-Iファージのspontaneous inductionが起こる血清群O142の1株についてrecA欠損株およびその相補株を作製し、それぞれCDT-Iファージ誘導能を調べた。結果として、recA欠損株においてCDT-Iファージ誘導が完全に消失し、相補株において回復したことから、CDT-Iファージ誘導がRecA依存経路で起こることを見出した。 (2) O127およびO142からそれぞれ2株ずつ選択し、R-M system遺伝子群のシークエンスを行った。結果として、hsdSおよびhsdR遺伝子に大きな違いがあることを見出した。し かし、O127はいずれの菌株も外来遺伝子に対するRestrictionが強く、遺伝子改変ができなかった。また、O142のR-M遺伝子群は巨大プラスミド上に存在し、遺伝子改変ができなかった。以上の理由により、これらの遺伝子群をスワップさせた変異株を作製できなかった。 (3) O142の1株についてtransposon mutant Libraryを作製できたため、CDT-Iファージ誘導が消失するクローンをスクリーニングした。結果、8クローンを得ることができたが、いずれもCDT-Iファージゲノム内にトランスポゾンが挿入されたクローンであったため、宿主由来のファージ誘導促進因子の同定には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の目標として「CDT-Iファージ誘導経路の解明」、「Transposon mutant library の作製」および「CDT-I ファージ誘導関連因子の同定」を予定していた。 「CDT-Iファージ誘導経路の解明」については、RecA依存経路であることを同定できた。 「Transposon mutant libraryの作製」について、血清群O142については1株でLibraryを作製し、CDT-IファージのSpontaneous inductionが消失するクローンのスクリーニングを行った。しかし、O127においては保有するいずれの菌株も外来遺伝子を許容しなかったため、Libraryの作製ができず、CDT-Iファージ誘導関連因子の同定に至っていない。このため「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
CDT-IファージがRecA依存経路によって誘導されていることが判明した。今後、O127およびO127のCDT産生性大腸菌間でのRecA発現量を解析し、CDT-Iファージの安定性がRecA発現の上流、下流のいずれのファクターが影響しているのか解析する。 一方、Stx2ファージにおいて、ファージ間相互作用(intra-prophage interaction)がファージのSpontaneou inductionに影響を及ぼすという報告がされている。CDT-Iファージについても同様の現象が見られるのか、O127およびO142のCDT産生性大腸菌が保有するCDT-Iファージ以外の溶原化ファージの保有状況等を調べる。これらの解析によりCDT-Iファージの安定性影響因子の同定に繋げる。
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