研究課題
平成27年度は宿主の血清型間でCDT-Iファージの安定性が異なる、即ちspontaneous inductionのレベルが異なる原因を明らかにするため、2つの項目を実施した。最初に(1)血清型間でのRecA発現量を比較した。O127とO142で2株ずつ選択し、RecAのmRNA発現量をGapAに対する相対値として経時的に算出した。結果として、O127では2株共に調べた培養時間に関わらず一定のRecA/GapA値を示したが、O142の1株では培養2時間後から同値は上昇し、培養5時間後にピークに到達し、培養6時間後に減少に転じた。即ち、SOS誘導のトリガーであるRecA発現量がO142では高いために、CDT-Iファージのspontaneous inductionレベルが高い可能性を示している。一方で、O142のもう1株ではO127の2株と同等のRecA/GapA値を示したことから、血清型間でCDT-Iファージの安定性が異なる原因は、他に起因するか、あるいは1種類のファクターが決定しているのではない可能性が示された。次に(2) Stx2ファージにおいて、ファージ間相互作用(intra-prophage interaction)がファージのspontaneou inductionに影響を及ぼすという報告がされていることから、CDT-Iファージにおいても同様の現象が認められるか調べた。大腸菌における既知のラムダ様ファージ遺伝子のcI遺伝子をDNAデータバンクから抽出し、系統解析したところ、cI遺伝子は23種類に分類できた。これら23種類の標識遺伝子プローブを作製し、O127(7株)およびO142(12株)に対してColony hybridization法により各種遺伝子の保有状況を調べた。結果、O142では2~4個のcI遺伝子が陽性であったのに対し、O127では6~7個に要請を示した。更に、調べた全てのO127が共通して保有するが、O142は保有しないcI遺伝子が4個存在した。これは、4個のcI遺伝子が由来する4種のプロファージのいずれか、あるいは複数個がO127におけるCDT-Iファージのspontaneous inductionに抑制的に働いている可能性を示している。
すべて 2015
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