研究課題
若手研究(B)
申請書に示した各研究計画項目別にその実績を以下に述べる。1)NTNHAが細胞に結合し、透過するためには、NTNHA分子内のどのドメインが関与するのか:NTNHA分子内のどの領域が細胞への結合透過に関与するのかを明らかにするため、NTNHAタンパク質の部分領域を組換えタンパク質として作成するための発現ベクターを構築した。その結果、合計4種のNTNHAタンパク質の部分領域を含むタンパク質を合成することに成功した。今後は、これらのタンパク質の細胞への結合および透過試験を行い、NTNHA分子内で特に細胞への結合透過に必要不可欠な領域を明らかにする。2) NTNHAは、どの細胞に結合し、透過するのか:D型NTNHAタンパク質が結合および透過する細胞種を明らかにするため、ラット小腸上皮細胞株(IEC-6)、ヒト結腸細胞株(Caco-2)、ウシ大動脈血管内皮細胞株(BAEC)およびイヌ腎臓尿細管上皮細胞株(MDCK)を用いた結合試験、細胞への取り込み試験および透過試験を行った。その結果、NTNHAはIEC-6およびBAECを透過するが、Caco-2およびMDCKを透過しないことが明らかになった。これらの結果は、ボツリヌス毒素の動物に対する感受性に対し、毒素成分だけでなく無毒成分も関与することを示している。本結果は、一応の成果を得たので、現在、英文誌に投稿中である。3)NTNHAは細胞膜上の何を目印に細胞へ結合するのか:各種糖を用いた結合阻害実験を行った結果、シアル酸およびラクトースによって細胞への結合が阻害された。この結果は、NTNHAがシアル酸あるいはラクトースを末端にもつ糖鎖を認識し、細胞へ結合していることを示した。4)NTNHAは細胞内のどこを通って、細胞層を透過するのか:本項目は、平成26年度に実施する計画であり、本年度は実施していない。
2: おおむね順調に進展している
NTNHAが特異的に結合し透過する細胞種が明らかとなった。これらの結果から、ボツリヌス毒素の体内への侵入において、動物種に対する特異性と各器官に対する特異性に対し、NTNHAが何らかの役割をもつことが示された。また、NTNHAが、細胞膜上の糖鎖のうち、シアル酸およびラクトースを末端にもつ糖鎖を特異的に認識して結合することが示された。また、NTNHAタンパク質の部分領域を含むタンパク質の合成にも成功している。これらのタンパク質を用い、NTNHAのどの領域が細胞への結合に関与するのかを試験することができる。以上の成果は、研究計画通りに進んでおり、研究は、おおむね順調に進んでいるものと考える。
研究は概ね計画通りに進んでおり、当初の計画通りに進行する予定である。すなわち、平成25年度に確立したNTNHAの部分領域を含むタンパク質を用いて、細胞への結合および透過試験を実施する。また、NTNHAが結合する細胞膜上タンパク質の同定を行う。さらに、NTNHAの細胞結合および透過を阻害する化合物を特定することで、本タンパク質が細胞を透過する際に関与する細胞内小器官を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
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