研究実績の概要 |
百日咳菌Bordetella pertussisの線毛 (fimbriae, fim)は百日せきワクチンの抗原として重要なタンパク質である。Fimをコードする遺伝子(fim2, fim3 および fimX)は、そのプロモーター領域にCが連続する特徴的な poly(C)配列(Pfim polyC)を含んでおり、このpoly(C)長がfim 遺伝子発現のON/OFFに関与することが知られている。平成26年度は、昨年度に新たに構築した解析手法を用いて、抗菌薬のfim発現に対する影響と、これまで一致した見解が得られていなかったfim3遺伝子発現機構について検討した。 1. 百日咳菌をsub-MIC濃度(0.01 ug/ml)の各種抗菌薬を含むBG培地で培養した。PCR/LDR法によりPfim poly(C)長の変化を測定し、またELISAにてFimタンパク質の産生量を比較した。その結果、抗菌薬によるfimの発現・産生に影響は認められなかった。 2. これまで、fim2遺伝子は2成分制御系BvgASが働く環境(Bvg+)で発現することが示されてきたが、fim3遺伝子に関してはBvg+で発現するか、BvgASが働かない環境(Bvg-)で発現するかについて一致した見解が得られていなかった。本研究では各種血清型に分類される百日咳菌臨床分離株14株を用いて、Bvg+/-環境下におけるfim2およびfim3遺伝子発現・タンパク質産生を調べた。Fim2株ではBvg-環境下でfim3遺伝子発現が有意に上昇することが新たに確認されたが、ELISAではFim3タンパク質の産生が検出されなかった。Pfim3 poly(C)長を解析したところ、fim3遺伝子の発現・タンパク質産生はプロモーター領域のpoly(C)長により厳密に制御されていることが明らかとなった。
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