研究課題/領域番号 |
25860330
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
渡邊 真弥 独立行政法人国立国際医療研究センター, 感染症制御研究部, 上級研究員 (60614956)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | G群レンサ球菌 / 侵襲性感染症 / 溶血毒素 / ストレプトリジンS |
研究概要 |
近年の疫学調査により、劇症型感染症を含むG群レンサ球菌による侵襲性感染症が増加していることが明らかになっている。しかし、G群レンサ球菌が侵襲性感染症を引き起こす分子メカニズムは、ほとんど明らかになっていない。本研究の目的は、マウスを用いたG群レンサ球菌侵襲性感染症モデルを用いて、G群レンサ球菌が、ストレプトリジンS(SLS)及び新規溶血因子を複合的に作用させ侵襲性感染症を発症させるかどうかを明らかにすることである。 我々は、G群レンサ球菌をddYマウスの腹腔に投与し、経時的に回収した菌からRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行った。感染2時間後にストレプトリジンO(SLO)遺伝子が高発現しており、さらに4時間後以降にSLSオペロンの発現が上昇していることが明らかになった。次に、G群レンサ球菌の病原因子の抑制性転写調節因子をコードしているcsrS遺伝子を破壊した株を用いて、同様にマウスの腹腔に投与してマイクロアレイ解析を行った。その結果、csrS破壊株ではSLSオペロンの発現が投与前から上昇していた。csrS破壊株をマウスに投与すると著名な血尿が認められ、さらに同菌接種後のマウスから血液を採取したところ、明瞭な溶血が認められた。また代表的な臓器として腎臓の観察を行ったところ、csrS破壊株では、腎臓肥大を認め、腎臓組織切片の観察では血腫が確認された。これらは、SLSの溶血毒素としての活性によるマウスでの全身性溶血現象が強調されたと考えられた。さらに、この溶血現象の臨床的意義を評価するため、SDSE臨床分離株83株においてSLSとSLO、およびそれ以外の溶血活性の定量を行った。その結果、国内流行型のstG6792分離株は他の型の分離株と比較して、SLSとSLOの産生量が有意に高いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、G群レンサ球菌による侵襲性感染症発症機構の解明である。我々は、侵襲性感染症モデルマウスとG群レンサ球菌特異的マイクロアレイを用いた解析により、G群レンサ球菌感染時、溶血因子の遺伝子発現が経時的に上昇していることを明らかにした。次に、G群レンサ球菌の転写調節因子をコードしているcsrS遺伝子を破壊すると溶血因子SLSオペロンの発現が恒常的に上昇していることを明らかにした。このcsrS破壊株をマウスに投与したところ、全身性の溶血現象が観察された。さらに、侵襲性感染症患者から分離されたG群レンサ球菌の溶血毒素の活性測定をしたところ、国内流行型であるstG6792分離株では溶血因子SLSとSLOの活性が高いことを明らかにした。以上のことを論文としてまとめ、Journal of Infectious Diseases誌上で報告した。これらの理由から、平成25年度における目標は概ね達成されていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度における侵襲性感染症マウスモデルを用いたG群レンサ球菌の発現解析により、溶血因子の産生が侵襲性感染症発症時に重要であることが示唆された。さらに、転写調節因子CsrSが溶血毒素の産生及びマウスに対する病原性に重要であることが明らかになった。そこで平成26年度では、前年度に行ったマウスモデルを用いた発現解析から病原性に重要な因子を抽出し、それらの遺伝子破壊株を作成して実際に病原性に影響するかを検証する。類似の感染症を引き起こすA群レンサ球菌を用いて、同様に侵襲性感染症マウスモデルを用いた発現解析を行い、G群レンサ球菌のものと比較する。
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