近年の疫学調査より、A群レンサ球菌と同様に、G群レンサ球菌が劇症型レンサ球菌感染症をはじめとする重篤な侵襲性感染症を引き起こすことが明らかとなっている。しかし、今まで病原性が低いと言われていたため、G群レンサ球菌が侵襲性感染症を引き起こす分子メカニズムに関する研究はほとんど行われていない。本研究の目的は、マウスを用いたG群レンサ球菌侵襲性感染症モデルを用いて、G群レンサ球菌が溶血因子を含む病原性因子を複合的に作用させ侵襲性感染症を発症させるメカニズムを明らかにすることである。 前年度における侵襲性感染症マウスモデルを用いたG群レンサ球菌の発現解析により、溶血因子の産生が侵襲性感染症発症時に重要であることが示唆された。さらに、転写調節因子CsrSが溶血毒素の産生およびマウスに対する病原性に重要であることが明らかになった。本年度では、侵襲性感染症を引き起こした臨床分離G群レンサ球菌株の中からcsrS遺伝子に変異が入った2株を選択し、変異が入っていないcsrS遺伝子を相補した株を作成し発現解析を行った。前年度は、マイクロアレイを用いて全ゲノム解析を終了した臨床分離株GGS124株の発現解析を行った。しかし、本年度は全ゲノム配列が明らかとなっていない臨床分離株を対象としたため、次世代シークエンサーを用いたRNA-seqにより発現解析を行った。その結果、csrS遺伝子に変異が挿入されると溶血因子を含む一連の遺伝子の発現が上昇していることが明らかとなった。
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