RIG-I下流シグナル伝達経路の解明として、本来なら複数の変異体を用いたIPS-1のStable Cell Lineを用いてマイクロアレイ解析を行う予定だった。しかしながら、各Stable Cell Lineによって発現量が大幅に異なりマイクロアレイ解析では信用性の高い結果が得られなかった。そこで、研究の方向を大幅に変更しIPS-1のドメイン解析を行い、よりよいIPS-1変異体の作成を目指した。IPS-1の構造を持たないランダムコイル領域を複数の領域にわけた変異体を作成し、それぞれHisタグで精製した後にゲルろ過によりアグリゲーションの度合いを調べた。IPS-1は活性化型になるとアグリゲーションを起こすため、ゲルろ過では排除体積に溶出される。しかしながら、全長のIPS-1はアグリゲーションを起こさない、逆にアミノ末端にあるCARDのみを発現させた場合はアグリゲーションを起こす。そこで本研究ではIPS-1のランダムコイルの中にアグリゲーションを阻止するメカニズムが存在すると考えた、すなわち活性化時にRIG-Iによりこのメカニズムが解除されることでアグリゲーションを起こし、下流にシグナル伝達を行うと考えられる。そこでCARD-ランダムコイル前半部、CARD-ランダムコイル後半部とわけた変異体を作成し、ゲルろ過で解析を行うとCARD-ランダムコイル前半部はアグリゲーションを起こさないが、CARD-ランダムコイル後半部はアグリゲーションを起こした。よって、ランダムコイル前半部にアグリゲーションを阻害する領域があるとしてさらなる研究を行った。
|