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2013 年度 実施状況報告書

構造生物学的アプローチによるウイルスタンパク質の自然免疫阻害機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25860341
研究種目

若手研究(B)

研究機関広島大学

研究代表者

小田 康祐  広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院, 特任助教 (60571255)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードCタンパク質 / STAT1 / アクセサリータンパク質 / センダイウイルス / 自然免疫 / X線結晶構造解析 / パラミクソウイルス / タンパク質複合体
研究概要

研究実績の概要
センダイウイルス (SeV) Cタンパク質は, 宿主転写因子STAT1のN末端ドメイン (STAT1ND) に結合することで, インターフェロン (IFN) -alpha/betaおよびIFN-gammaによるシグナル伝達を阻害する。ただし, SeV感染後期になると, IFN-alpha/betaまたはIFN-gamma存在下で, 細胞内にリン酸化STAT1が蓄積する。本研究では, Cタンパク質がSTAT1およびSTAT2のリン酸化を阻害する機構を解明するとともに, SeV感染後期で細胞内にリン酸化STAT1が蓄積する理由を明らかにすることを目的としている。
本年度では, Cタンパク質とSTAT1NDの複合体構造を, X線結晶構造解析より明らかにすることを目指した。タンパク質結晶化予測プログラムやSTAT1NDを用いた免疫共沈降法の結果をもとに, N末端側98アミノ酸残基を欠失させたCタンパク質変異体 (Y3と命名) を用いて, STAT1NDとの複合体結晶を作製することに成功した。収集した回折強度を用いて, 複合体の三次元構造を2.0Å分解能で決定した。その成果として, 1分子のY3は, STAT1ND二量体のサブユニット間に結合し, STAT1ND二量体に対して2分子のY3が結合することが判明した。さらに,全長型STAT1の結晶構造と比較したところ,Y3はSTAT1NDに結合することで,STAT1におけるN 末ドメインとC末ドメインの間の相互作用を妨害することが示唆された。特に,二量体のSTAT1に1分子のY3が結合すると,STAT1はその脱リン酸化が促進される構造をとりやすくなり, 2分子のY3が結合すると, STAT1は脱リン酸化が阻害される構造を取りやすくなると予想された。ただし, 脱リン酸化が阻害されたY3結合型のSTAT1は, DNA結合型の構造には変換されないと推測される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までに, IFNによるシグナル伝達を阻害しない組換えSeV株から取得したCタンパク質を用いて, IFNシグナル伝達の阻害に, Cタンパク質とSTAT1NDとの結合が重要であることを確かめた。またY3:STAT1ND複合体の三次元構造を決定することに成功した。

今後の研究の推進方策

研究当初, Cタンパク質はオリゴマーを形成することで, IFNによるシグナル伝達を阻害すると予測していた。しかしながら, 免疫共沈降法の結果から, Cタンパク質は, 培養細胞内でオリゴマーを形成しないことが示された。結晶中においても, Y3は, 隣接するもうひとつのY3と相互作用をしていなかった。Cタンパク質は, オリゴマーを形成せずに, 単量体のままでIFNによるシグナル伝達を阻害していると推察される。今後は, 複合体構造より得られた知見をもとに, Cタンパク質によるIFNシグナル伝達阻害機構の解明を目指す。具体的に述べると, STAT1にCタンパク質が結合すると, 全体構造が特定の構造に変化すると考えられる。そこで, まず, 非リン酸化STAT1に対してCタンパク質を加え, X線小角散乱実験を実施する。得られた散乱曲線から, STAT1ホモダイマー中の各ドメイン間の相対的位置変化を観察する。また, Cタンパク質は, STAT1二量体に1分子結合すると, その脱リン酸化を促進し, 2分子結合すると, 脱リン酸化を阻害する可能性がある。これを調べるため, リン酸化STAT1を調製し, これにCタンパク質および脱リン酸化酵素を混ぜて, リン酸化STAT1の量がどのくらい変化するのかを経時的に観察する。解析は, ウェスタンブロット法により行い, リン酸化STAT1に対する抗体を用いて検出する。

次年度の研究費の使用計画

IFN-alpha/betaの刺激によりリン酸化される前に, STAT2はSTAT1と弱く結合する。当初の研究計画では, Cタンパク質はSTAT2結合型とSTAT2非結合型のどちらのSTAT1と好んで結合するのかを, ゲルろ過クロマトグラフィー解析により調査する予定だった。しかしながら, STAT2のin vitro調製が困難であったことから, 本調査を断念した。これに係る物品費は, 次年度に持ち越した。
次年度に持ち越した助成金は, 次年度分として請求した助成金と合わせて, 本研究遂行のために使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] ウイルスによる自然免疫抑制の構造学的解析2014

    • 著者名/発表者名
      坂口剛正, 小田康祐,入江崇,
    • 学会等名
      平成26年度中四国乳酸菌研究会総会および研究発表会
    • 発表場所
      岡山
    • 年月日
      20140516-20140516
  • [学会発表] インターフェロン応答を阻害するセンダイウイルスCタンパク質の構造生物学的解析2014

    • 著者名/発表者名
      小田康祐
    • 学会等名
      3rd Negative Strand Virus-Japan
    • 発表場所
      沖縄
    • 年月日
      20140113-20140115
  • [学会発表] センダイウイルスCタンパク質と宿主転写因子STAT1の複合体構造2013

    • 著者名/発表者名
      小田康祐, 的場康幸, 江田優子, 川端涼子, 入江崇, 福士雅也, 坂口剛正
    • 学会等名
      第36回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      兵庫
    • 年月日
      20131203-20131206
  • [学会発表] 自然免疫の抑制に関わるセンダイウイルスCタンパク質と宿主転写因子STAT1の構造生物学的解析2013

    • 著者名/発表者名
      小田康祐, 的場康幸, 川端涼子, 入江崇, 福士雅也, 坂口剛正
    • 学会等名
      第61回日本ウイルス学会学術集会
    • 発表場所
      兵庫
    • 年月日
      20131110-20131112
  • [学会発表] センダイウイルスCタンパク質と転写因子STAT1の相互作用の構造学的解析2013

    • 著者名/発表者名
      小田康祐, 川端涼子, 入江崇, 福士雅也, 坂口剛正
    • 学会等名
      第28回中国四国ウイルス研究会
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      20130622-20130623

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公開日: 2015-05-28  

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