研究課題
若手研究(B)
E型肝炎ウイルス (HEV) の感染細胞からの放出には、multivesicular body (MVB) sortingが重要であり、粒子表面の膜成分がエンドソーム膜に由来していることを明らかにしてきた。本年度は、エンドソーム膜を獲得した成熟ウイルス粒子の放出機構について、エクソソーム分泌経路の役割を中心に解析した。siRNAまたは薬剤を用いてエクソソームの形成ならびに放出を阻害した結果、ウイルスの放出が抑制された。一方、薬剤処理によりエクソソームの放出を促進すると、ウイルスの放出が促進されることが明らかとなった。電子顕微鏡による解析の結果、感染細胞外に膜に覆われた直径約50 nmのHEV粒子が観察された。さらに、感染細胞のMVB内腔にも、膜に覆われたウイルス粒子が認められた。以上の結果から、HEVはMVB内腔へと出芽し、成熟ウイルス粒子がエクソソーム分泌経路を介して細胞外に放出されることが明らかとなった。ウイルス粒子表面の膜成分に存在する抗原の解析では、膜に覆われたHEV粒子を特異的に認識するマウスモノクローナル抗体 (TA1708抗体) を作製し検討を行った結果、表面抗原の1つがトランスゴルジネットワークに由来するtrans-Golgi network protein 2 (TGOLN2) であることが明らかとなった。本研究成果は、Archives of Virology (Nagashima et al. The membrane on the surface of hepatitis E virus particles is derived from the intracellular membrane and contains trans-Golgi network protein 2. 159:979-991, 2014.) に掲載された。
2: おおむね順調に進展している
HEVはエンドソーム内腔へと出芽することにより、粒子表面に膜成分を獲得することが明らかとなった。さらに、膜に覆われたHEV粒子は、エクソソーム分泌経路を利用することにより細胞外へ放出されるという重要な知見が得られた。また、HEV粒子表面に存在する膜成分の抗原については、すでに論文として発表し、次年度の研究を進展させることが可能である。以上のことから、研究は当初の計画通り進捗していると考えている。
HEVの粒子表面に存在する抗原の解析は、HEVの生活環を理解する上で重要であると考え、今後はエクソソームおよびエンドソームの膜表面に存在する抗原を中心に、網羅的な解析を予定している。研究の実験方法はこれまでに当研究室で用いられているため、迅速かつ確実に行うことができる。最近、ウイルス感染細胞に由来するエクソソームが、ウイルスの感染を媒介していることが報告されている。そこで、HEV感染細胞から放出されたエクソソームの性状についても解析を進める予定である。また、すでに作製した電子顕微鏡標本を用いた詳細な解析により、ウイルス粒子のエンドソーム膜への出芽ならびにMVBと細胞形質膜との融合によるウイルス粒子とエクソソームの放出を形態学的に明らかにすることができると考えている。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Virus Research
巻: 185 ページ: 92-102
10.1016/j.virusres.2014.03.002
巻: 180 ページ: 59-69
10.1016/j.virusres.2013.12.014
巻: 179 ページ: 102-112
10.1016/j.virusres.2013.10.029
Archives of Virology
巻: 159 ページ: 979-991
10.1007/s00705-013-1912-3
Hepatology Research
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/hepr.12216
10.1111/hepr.12155
http://www.jichi.ac.jp/virology/