研究課題/領域番号 |
25860344
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
小林 富成 自治医科大学, 医学部, 助教 (00634164)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | E型肝炎ウイルス / 5'非翻訳領域 / リアルタイムRT-PCR法 / cell-free蛋白質翻訳系 / ウイルス複製 / リバースジェネティクス法 |
研究概要 |
E型肝炎ウイルス(HEV)の増殖機構は未だ十分に分かっていない。そこで、研究代表者が所属する研究室で世界に先駆けて開発されたHEVの細胞培養系とreverse genetics system、及び研究代表者が自ら開発したHEVのcell-free蛋白翻訳系を駆使し、感染性cDNAクローン(pJE03-1760F)に種々の変異を導入し、5’非翻訳領域(5’UTR)の構造と機能について検討した。 先ず、種々の変異を導入したcDNAクローンに由来する完全長RNAをPLC/PRF/5細胞にtransfectし、増殖効率への影響を検討した。その結果、5’UTRのほぼ全長 (nt 1-22)を欠く変異体は増殖しないことが分かった。そこで、6塩基対からなるステム構造の配列をそれぞれ相補的な配列に置換し、塩基対を保持した変異体を作製したところ、野生型と同等の増殖効率を示した。一方、ステム構造の6塩基対のペアをすべて壊した変異体は増殖しなかった。また、構造を維持したまま塩基配列を置換すると、興味深いことにGCペア数依存性に高い増殖効率を示した。ループ構造では、塩基配列を置換しただけの変異体は野生型と同等の増殖効率を示したが、構成する4塩基をすべて欠損させた変異体は増殖効率が1/100~1/500に減少した。バルジ構造の2塩基を欠損させた変異体は増殖しなかった。 次にA549細胞に接種し、progeny virusの感染性について検討した。増殖が確認された変異体はいずれも感染性を有し、上記実験で得られたウイルス増殖効率についても再現性が認められた。また、5'UTRのほぼ全長(nt 1-22)を欠く変異体を除き、それぞれの変異体においてウイルス蛋白質の発現を確認した。 それぞれの変異体5’UTRのステム構造、バルジ構造のいずれかの構造が欠けてもHEVの増殖が抑制されたことから、5’UTRの2次構造がHEVの増殖に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。また、構造だけではなく塩基配列も増殖の効率に影響していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度の目的は①5’非翻訳領域に変異を導入した様々なHEV変異クローンの構築とHEV産生への影響の解析、②ウイルスタンパク質の翻訳に関与する5’非翻訳領域の配列と2次構造の解明である。HEV変異クローンの構築とHEV産生への影響は研究実績の概要に記したように、当初の計画通り進展しており、各変異体において解析を終え、5’UTRの2次構造がウイルスの複製に重要な役割を果たしており、塩基配列もウイルスの増殖効率に関与していることを明らかにした。さらに、5’UTRはウイルス蛋白質の翻訳に必要であるが、5’UTR内の2次構造や塩基配列の変異は、翻訳に顕著な影響はないことを明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
H26年度の計画はゲノムRNA・サブゲノムRNAの複製に関与する5’非翻訳領域の配列と2次構造の解明である。RNAの検出については、ノーザンブロット法を用いて感染細胞内で複製したHEVのゲノムRNA、サブゲノムRNA、および複製中間体である2本鎖RNAを検出する方法を確立できている。それぞれの変異体RNAを導入した細胞からRNAを抽出し、2本鎖RNAを検出することにより、ウイルスRNAの複製(特に-鎖から+鎖の複製)に関与する5’UTRの配列と2次構造を明らかにする。また、増殖した変異体の蛋白発現効率及び細胞内局在が野生型と同等であるか否かを確認するために、ウエスタンブロット法や蛍光抗体法により検討する予定である。
|