研究課題/領域番号 |
25860345
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
梶川 瑞穂 昭和薬科大学, 薬学部, 助教 (00464389)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ウイルス / 免疫受容体 / ユビキチンリガーゼ / 膜タンパク質 / 免疫回避 |
研究概要 |
平成25年度は「組換えMIRおよびMHC-Iの調製」および「人工脂質二重膜構造体:ナノディスクの調製」を行った。「組換えMIRおよびMHC-Iの調製」については、既に組換えMIR1タンパク質(膜貫通領域および細胞外領域)の作製方法が確立していることから、今年度はMIR1の基質となる免疫受容体MHC-Iの組換えタンパク質の調製を行った。MHC-Iの膜貫通領域およびその近傍をコードするcDNAを発現ベクターに組み込み、大腸菌株に遺伝子導入することで、MHC-Iを封入体として大量発現させ、Niアフィニティ樹脂により精製することができた。次に「人工脂質二重膜構造体:ナノディスクの調製」については、まず既に確立されている方法に従って、膜骨格タンパク質MSP1E3D1を大腸菌BL21(DE3)の可溶性画分へ大量発現させ、Niアフィニティ樹脂による精製を行った。精製したMSP1E3D1タンパク質とリン脂質1,2-Dipalmitoyl-rac-glycero-3-phosphocholine(DPPC)もしくは1,2-Dimyristoyl-rac-glycero-3-phosphocholine(DMPC)を混合することでナノディスクを調製した。調製したナノディスクはゲル濾過クロマトグラフィーおよび電気泳動により正しく作製されたことを確認した。NMR測定に至るまでに必要な各種条件検討、および構造解析を行う為のNMRにおける条件検討は長期間に及ぶことが予想される為、作製したナノディスクの安定度を確認した。従って、精製後のナノディスクを冷蔵し、保存日数による安定度をゲル濾過クロマトグラフィーによって評価したところ、作製後3週間が経っても安定していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度中に組換えMIR1単独のナノディスクおよびMIR1とMHC-Iとを一緒に組み込んだナノディスクの調製を目指していたが、組み込む前の空のナノディスクを調製できるようになった段階までの達成となった。しかし、ナノディスクを構成する各種組換えタンパク質の供給方法が安定し、さらにはナノディスクの長期安定性を確認できたことから、今後は十分なサンプル資源を背景に目的タンパク質を組み込んだナノディスクの調製方法を確立し、NMR測定に進むことを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、まずナノディスクに目的タンパク質を導入し、ゲル濾過クロマトグラフィーと電気泳動、CDスペクトル測定によって組み込みを確認する。次に、構成分子を15Nで標識し、1H-15N HSQC測定により、スペクトルを指標にして測定条件の決定を行う。条件決定後は13Cによる標識も追加して、3D NMR測定による主鎖及び側鎖の帰属を試みる。以上をMIR1およびMHC-Iを組み込んだナノディスクで達成できれば、結合の分子基盤を明らかにすることが可能となる。ここまでの段階でうまくいかない点が生じた場合、MIR1とMHC-IのSingle chain化、化学シフト摂動法により結合に関与する残基を同定する、などの手段をもって、目的の達成を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究はNMRによる構造解析を目的としており、NMR測定のための安定同位体標識試薬が必要となる。しかし平成25年度中にNMR測定まで到達しなかったことから、その分の経費を必要としなかったため、次年度使用額が生じた。 平成26年度は早い段階でNMR測定を開始予定で、そのための安定同位体試薬の購入経費として次年度使用額を消費する。
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