研究実績の概要 |
平成26年度は前年度に作製法を確立した人工脂質二重膜構造体であるナノディスクを用い、組換えMIR1膜貫通領域ペプチドの組み込みと、その条件の最適化を行った。ナノディスク作製の際に各種条件を検討し、高効率で生成できる条件を決定済みであるため、MIR1の組み込みについても、その条件を適用できるかどうかを中心に検討した。ナノディスクは脂質と膜骨格タンパク質を混合することで生成するが、その際に変性状態のMIR1膜貫通領域ペプチドを混合することでナノディスクへ組み込むことに成功した。ディスク直径の異なる2種類の膜骨格タンパク質MSP1およびMSP1E3D1を用いて、それぞれのナノディスクへのMIR1膜貫通領域ペプチドの組み込み効率を比較したところ、直径の大きいMSP1E3D1によく組み込まれることが明らかになった。脂質については1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine(POPC)、1,2-dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphocholine(DPPC)、および1,2-Dimyristoyl-rac-glycero-3-phosphocholine(DMPC)の3種類を検討し、DPPCがMIR1膜貫通領域ペプチドの組み込みに最適であることを明らかにした。また、ナノディスクとMIR1膜貫通領域ペプチドの最適混合比率はモル比で1:5であることを明らかにした。この条件で作製したMIR1-ナノディスクは95%以上のαへリックス構造を維持しており、これはαヘリックス構造を持つMSP1E3D1により作製されたナノディスクに、MIR1膜貫通領域ペプチドがαヘリックスとして組み込まれたことを示している。すなわちMIR1膜貫通領域をナノディスク中にて膜貫通ヘリックスとして再構成することに成功したと考えられる。
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