1. HPV持続感染の背景としてのE1-NFkB負のフィードバック機構の発見。 HPV16ゲノムを維持する細胞に、ウイルスDNAヘリカーゼであるE1を外来性プロモーターより発現させると、DNA損傷修復系を制御する主要なキナーゼであるATRの活性化を介してNFkBが活性化され、このNFkBの活性化はウイルスゲノム複製を抑制することを明らかにした。さらに、NFkB活性化は、E1のプロテオソーム分解を促進することを示した。また、HPV31ゲノムをエピゾームとして維持する患者由来細胞株やHPV16ゲノムを維持する細胞において、NFkB活性化を惹起するとウイルスゲノムコピー数が減少し、内在性のNFkB活性を抑制するとウイルスゲノムコピー数が増加したことから、HPV持続感染成立の背景には、E1によるATR-NFkB活性化と、それらによるゲノム複製の抑制という負のフィードバックが関与する可能性を示し、Journal of Virology誌上で発表した。最終年度は、E1のタンパク分解に関与するE3ユビキチンリガーゼの同定を試みた。アミノ酸配列の解析結果から、E1上には少なくとも2種類のE3ユビキチンリガーゼの認識モチーフが存在しており、これらのモチーフに変異を導入するとE1のタンパク安定性が増加した。 2. HPV維持複製をモニターできるレポーターウイルスゲノムの作製。 レポーター遺伝子として分泌型ルシフェラーゼを搭載したHPV16ゲノムを作製して評価した。結果、培養上清中のルシフェラーゼとゲノムコピー数が相関するレポーターゲノムの作製に成功した。さらに、このレポーターゲノムのコピー数は角化細胞内で長期に渡り安定に維持された。一方で、長期培養ではレポーターの発現が徐々に減少したことから、改善が必要であることが示された。
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