研究課題/領域番号 |
25860350
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
藤井 健 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主任研究員 (10580201)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エンテロウイルス71 / 神経病原性 / 神経指向性 |
研究実績の概要 |
エンテロウイルス7(EV71)はピコルナウイルス科エンテロウイルス属A群ヒトエンテロウイルスに分類される、手足口病の原因ウイルスの1つである。EV71感染による手足口病の中には神経合併症を伴う死亡例が報告されているがその神経病原性および神経指向性の仕組みは解明されていない。我々はEV71感染受容体であるhSCARB2を発現し、ヒトの類似した病態を発現するhSCARB2-Tgマウスモデルを作製した。本研究は自然免疫機構に着目し、hSCARB2-Tgマウスを用いて個体内におけるEV71神経指向性機構の解明を目的として実験を行った。 前年度までにEV71感染によるI型インターフェロン(IFN)応答の有無、I型IFN受容体欠損(hSCARB2-Tg-AR1KO)マウスの感受性増大を確認した。そこで本年度は各組織のウイルス増殖を調べるため、1x10^6 TCID50のIsehara株を静脈内接種し、病態発現時の個体の臓器中のウイルス力価を比較した。野生型hSCARB2-Tgマウスでは脳および脊髄で高いウイルス力価であったが、非中枢神経組織において検出限界以下であった。一方、hSCARB2-Tg-AR1KOマウスでは脳および脊髄のみならず肝臓や脾臓などの非中枢神経組織においても高いウイルス力価が認められた。次にウイルス感受性に違いがみられなかった病原体認識受容体欠損hSCARB2-Tgマウス(MDA5KO、TLR3KO、TLR7KO)においても野生型hSCARB2-Tgマウスと同様、非中枢神経組織において検出限界以下であった。 従って、非神経組織においてはI型IFNがウイルス増殖を抑制していることが明らかになった。しかし、単独の病原体認識受容体の欠損では非中枢神経組織でのウイルス増殖はみられなかったことから幾つかの病原体認識受容体の関与、若しくはその他の病原体認識受容体の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自然免疫系遺伝子欠損マウスの系統樹立に時間が必要であった。またウイルス感染による感受性試験の結論を導くためのマウスが予定していた匹数よりも多く必要になり、実験計画を予定通り遂行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
単独の病原体認識受容体欠損hSCARB2-Tgマウス(MDA5KO、TLR3KO、TLR7KO)ではEV71を認識している認識受容体を同定できていない。しかし、EV71認識に関わる因子の同定はEV71感染と神経親和性の解明に重要であると考え、多重欠損マウスの作製も開始した。この多重欠損マウス各因子の関連について解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
自然免疫系遺伝子欠損マウスの系統樹立に時間を要したこと、またウイルス感染による感受性試験の結論を出すまでに当初予定していた匹数よりも多くのマウスが必要であり、感染実験に時間を要し、予定の実験計画を遂行できなかったため次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
インターフェロンがEV71感染に重要であることまでは明らかになった。当初の実験計画に掲げたインターフェロン誘導遺伝子発現、ウイルス標的部位、ウイルス認識細胞の同定実験を実施するための消耗品と試薬購入に充てる。
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