研究課題
若手研究(B)
記憶ヘルパーT細胞は免疫記憶において重要な役割を担っていることが知られているが、生体内におけるその維持のメカニズムは未だ不明な点が多い。記憶ヘルパーT細胞を特異的に欠損するCD69遺伝子欠損マウスの液性免疫反応を評価したところ、免疫早期の抗体価や脾臓におけるプラズマ細胞数には差がないにもかかわらず、高親和性抗体価や骨髄におけるプラズマ細胞数には著しい欠損が見られた。そこで、プラズマ細胞の骨髄への移行に骨髄記憶ヘルパーT細胞が関与しているか解析するため、野生型マウスを免疫し、脾臓に生じたプラズマ細胞をCD69遺伝子欠損マウスに移植する実験を行った。その結果、CD69遺伝子欠損マウスでは野生型マウスと比べてプラズマ細胞の骨髄への移行能が顕著に低いことが明らかとなった。さらに、野生型のマウスにおいてプラズマ細胞の骨髄への移行能はあらかじめ免疫したマウスにおいて顕著に高くなることが明らかとなり、骨髄記憶ヘルパーT細胞はプラズマ細胞の骨髄への移行を補助する役割を持つことが示唆された。CD69遺伝子欠損マウスでは、濾胞ヘルパーT細胞や胚中心B細胞、胚中心の形成は正常に見られることより、今まで知られていない液性免疫における胚中心反応以降でのヘルパーT細胞の役割が明らかとなった。CD69遺伝子欠損マウスの解析から骨髄記憶ヘルパーT細胞が液性免疫において必須な役割をもつことが明らかとなった。今後、骨髄記憶ヘルパーT細胞の生体内における意義のさらなる解明が期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
記憶ヘルパーT細胞を特異的に欠損するCD69遺伝子欠損マウスの表現型を解析することで、記憶ヘルパーT細胞の詳細な機能解析を行うことが可能となった。胚中心反応以降での記憶ヘルパーT細胞によるB細胞の高親和性抗体産生を補助する機能について明らかにしたことで、今まで知られていない液性免疫における記憶ヘルパーT細胞の役割について明らかにすることができたと考えている。
これまで私たちは免疫反応の終息時において記憶ヘルパーT細胞が骨髄に定着し、骨髄のIL-7産生ストローマ細胞上に長期に渡り休止状態で維持されていることを見出してきた。一方で炎症状態が長期に渡って続いている慢性炎症においては記憶ヘルパーT細胞が炎症局所で維持されることから、骨髄での維持に類似した機構が形成されるのではないかと考え、慢性炎症組織における記憶ヘルパーT細胞の維持機構を解析して行く予定である。また、記憶ヘルパーT細胞が長期生存維持される末梢組織中には、様々な特徴を持つストローマ細胞が存在し、それらの細胞と記憶ヘルパーT細胞の関係についても解析していく予定である。炎症の遷延化に関わる記憶ヘルパーT細胞の維持機構を解明することで、アレルギーや自己免疫疾患などにおける有害な免疫記憶の制御法の基盤技術を創出することができると考えている。
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