研究課題/領域番号 |
25860359
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
星 奈美子 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (40645214)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | インターロイキン 10 / 病原菌 |
研究概要 |
我々をとりまく環境には多種多様の微生物が存在するが、その全てが生体に病害を惹起するものではない。腸内細菌など炎症を起こさない共生可能なものと、腸炎を惹起しうる病原菌を生体はどのように識別しているのか、そのメカニズムはまだ十分な解明が進んでいない。制御性サイトカインで知られるインターロイキン10(IL-10)のノックアウトマウスは無菌状態では異常を呈さないが、腸内細菌の存在下では腸炎を自然発症する。これはIL-10の非存在下では共生細菌が病原性細菌のように振舞うことを示唆している。本研究課題はIL-10が病原性/非病原性認識システムに関与しているかどうかの評価と、その機序を解明することを目標とする。 当年度は、微生物の違いにより免疫細胞の応答が異なるかを評価するためにマウスのマクロファージ系細胞株であるRAW264.7細胞を使用し、グラム陰性桿菌である大腸菌株(Escherichia.coli 055:B5)とサルモネラ菌株(Salmonella. enterica minnesota)由来の菌体成分であるリポポリサッカライド(LPS)で細胞を刺激しそのサイトカインプロファイルの違いについて検討した。まず刺激量、時間などを十分検討しシステム構築を行った後、データ回収をおこなった。その結果、どちらもLPSでの刺激にもかかわらず、サイトカイン産生のバランスが同様でない可能性が確認された。また、IL-10ノックアウトマウスを使用し、本研究で使用予定であるマウス内視鏡による重症度評価のシステムセットアップを開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当年度は細胞を使用したin vitro実験の条件検討と、マウスを使用したin vivo実験のシステムセットアップを中心に取り組んだ。細菌の細胞壁由来の分子であるLPSはToll-like receptorによって認識され免疫応答を惹起する。当年度のin vitro実験において、分子としてはLPSであても、由来の菌株により応答のプロファイルが異なることが示唆された。また、マウス内視鏡での観察にて当施設でのIL-10ノックアウトマウス腸炎は28週齢までには発症、増悪することを確認することが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
大腸菌株(Escherichia.coli 055:B5)とサルモネラ菌株(Salmonella. enterica minnesota)はともに腸炎をおこす病原体となり得ることから、今後は比較対照として非病原体である菌株による検討を行う必要がある。この際、微生物由来分子の検討の他、菌の活動性による免疫応答惹起能も重要であることから、生菌での検討を進める。IL-10ノックアウトマウスはT細胞依存性腸炎では無いため、成熟B細胞、T細胞が存在しないRag1-/-IL-10-/-でも炎症が起こるはずである。しかし、マウス内視鏡システムのセットアップ過程での観察で、我々の施設でのRag1-/-IL10-/-が腸炎を殆ど起こさないことが観察され、また腫瘍壊死因子TNFなどの炎症性サイトカインも上昇していないことが確認された。 これは、成熟B細胞、T細胞の非存在下であると十分な病原体の認識が起こらないことを示唆しており非常に興味深く、今後も慎重に観察を継続する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
H25年度に計上していた学会参加の旅費などが予定より下回ったため当該助成金が生じた。 H26年度に海外学会に参加するため、当該助成金を使用する予定である。
|