研究課題
我々が樹立したAire/mOVA-KIマウスをAire-KOマウスと掛け合わせて解析したところ、mOVA-KIマウスにおけるOT-IおよびOT-II T細胞の負の選択はAire欠損状態でも障害されなかった。また、OT-II TgでかつMHC classII-KOマウスの骨髄をAire/mOVA-KIに移植したところ、胸腺髄質上皮細胞(mTEC)の抗原提示のみで負の選択を誘導でき、このmTECによる負の選択もAire欠損によって障害されなかった。この結果は、Aireの有無はmTECの抗原提示能に影響しないことを示 唆している。Aire欠損下における骨髄由来APCの抗原提示能の評価をRIP/mOVA-Tgの胸腺におけるmOVA/MHC classIIの提示は主に骨髄由来APCによって担われている。加えてRIP-TgにおけるOT-II T細胞の負の選択がAire欠損によって障害されることから、Aireは骨髄由来APCの抗原提示能を制御していることが推察される。しかし、RIP-TgやAire/mOVA-KIなどのモデル抗原発現系を用いた場合、mTECの抗原提示を完全に排除した状態で負の選択を評価することは極めて困難である。そのために、mTECのみがMHCを欠損した新しいモデル動物を樹立しなければいけない。そこでOVAを提示しているDCを移入して負の選択を誘導する実験系を用い、その負の選択がAire欠損によって障害されるかどうかを検討した。すなわち、Aire-KOマウスにCD45.1マウス/OT-II Tg(CD45.2)マウスの mixed BMTを行い、2 週後OVAペプチドを添加したsplenic DCをBMTレシピエントに投与した。さらにその3日後、各レシピエントマウスの胸腺細胞をFACSで解析し、AireがmTECからDCへの抗原受け渡しを制御しているかどうかを評価した。その結果、RIP-TgではmTECからDCへの抗原の受け渡しが必要であるのに対して、我々の樹立したAire/mOVA-KIマウスではmTECから抗原が直接提示され、T細胞の負の選択が誘導出来るモデルであることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
我々が新規に樹立したAire/mOVA-KIはモデル自己抗原であるOVAを発現し、OVA特異的T細胞の負の選択に寄与することが明確になった。今後は、本モデルマウスを用いて、より詳細な研究を行う。
RIP-OVAと我々の樹立したAire/mOVA-KIとの相違点が明確になったので、今後は負の選択機構におけるAire依存性の違いが何によるかを明確にすることで、Aireの負の選択における役割を明らかにする。さらに、Aire依存的負の選択を担うmTECのsubsetを同定する作業にも着手し、自己寛容成立機構の全貌解明を目指す。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
J. Immunol.
巻: 139 ページ: 4356-4367
10.4049/jimmunol.1400389