研究課題
本年度は、濾胞性ヘルパーT細胞(以下、TFH細胞)を含めた種々のT細胞がIgA産生に与える影響を検討する中で、偶然にも、制御性T細胞として知られるFoxp3+T細胞が腸管IgAを介して腸内細菌を制御することを突き止めることができた。Foxp3+T細胞を含めた種々のT細胞をT細胞欠損マウス(CD3e欠損マウス)に移入する系を用いて、それらのマウスにおける腸内細菌叢の変化を詳細に検討したところ、ナイーブT細胞を移入したマウスにおいては大腸の炎症と共に、腸内細菌叢の多様性が移入前のT細胞欠損マウスと比較して著しく減少したのに対し、ナイーブT細胞とFoxp3+T細胞を同時に移入したマウスやFoxp3+T細胞を単独で移入したマウスにおいては腸内細菌叢の多様性が有意に増加していることが明らかとなった。興味深いことに、Foxp3+T細胞を移入したマウスにおいては、腸管IgAに依存して、腸内細菌の中でも、特にFoxp3+T細胞を誘導する機能をもつことが知られるクロストリジウム属に属する腸内細菌の多様性が増加していた。以上の結果から、Foxp3+T細胞は、腸内細菌、特にクロストリジウム属の細菌の多様性維持において非常に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。さらに、腸内細菌叢の多様性が腸管免疫系にどのような影響を与えるのかについて検討するため、多様性が異なる2種の移入マウス(ナイーブT細胞移入マウス及びFoxp3+T細胞移入マウス)より得られた腸内細菌叢を無菌マウスに定着させたところ、多様性が高い腸内細菌叢を定着させたマウスにおいて、高効率な腸管IgA誘導とFoxp3+T細胞の増殖が観察された。以上の結果から、腸管内における恒常性を維持するために腸内細菌叢、Foxp3+T細胞および腸管IgAの3者間で正の制御ループが形成されている可能性が示唆された。
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