本研究は放射線技術学教育に問題解決型学習(Problem Based Leaning: PBL)を導入するため、評価指標を開発し、さらにPBLを実践し、教育効果を評価するものである。 PBLは臨床事例を基に必要な知識を習得し、それを応用することで問題解決能力を得る学習法である。また小グループで行い、メンバーが協力し合うことで、チームワークやコミュニケーションなどの能力も身につけることができる。 まず本研究ではPBLの導入の場として、単純エックス線撮影の実習を選択した。実習では臨床事例として救急事例を用いた。学生を小グループに分け、臨床事例を基に医師の撮影指示を満たし、重篤な患者に対する適切な対応を考慮した単純撮影法についてグループワークにおいてワークフローを作成させた。さらにこのワークフローに従い、ファントムに対して実際にエックス線撮影を行うことで、ワークフローが妥当かを検討させた。学生は自らの知識を持ち寄り、協力して問題解決にあたり、必要とされる知識・技術とともに臨床現場をイメージして考える力を身につけた。 本研究では評価指標としてセマンティック・ディファレンシャル法を用いた。この方法は相反する意味の形容詞ペアを質問項目として、測定対象における印象の当てはまりの良さから、測定対象の概念を推定する。これは教育効果の評価では古くから用いられていた方法でる。本研究ではPBLを実践した実習の前後に調査を実施し、学生のX線撮影に抱く概念を比較した。結果として実習前には抵抗感、信頼感、疲労感が得られ、実習後には期待感、自己効力感、現実感が得られた。つまり、PBLの実践により学生の持つ概念が変化し、さらに実習後にはPBLの目的でもあるやる気やモチベーションを表す自己効力の概念が得られた。 本研究ではPBLを実践し、学生の持つ概念の変化という指標によって、PBLの効果を確認できた。
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