研究課題
若手研究(B)
本研究は、ゲノム研究を通じて得られる個人遺伝情報の、研究者間での共有のあり方について調査・研究を行うことを目的としている。なお、共有される遺伝情報は、研究協力者個人にとって機微な情報を多分に含みうる情報であることから、特に倫理的・法的・社会的課題の検討に焦点を当てている。25年度は、国際的なデータ共有方針、及び、米国と日本のデータ共有方針に関する検討を行った。第一に、ヒトゲノム計画以降に策定された、国際的なデータ共有方針についての調査を実施した。従来の共有方針では、遺伝情報の早急な「公開」が強調されていたのに対し、近年は、機微性や再識別可能性の高い遺伝情報については、制限付きアクセス条件下での「共有」が重視されていた。この変化の要因について、遺伝情報解析の大規模化と遺伝情報の再識別可能性という観点から考察を深めた。第二に、米国および日本におけるデータ共有方針について調査を実施した。米国においては、最近、国立衛生研究所(NIH)が公表した遺伝情報の共有方針(原案)について検討を進めた。以前の共有方針との比較から、対象範囲の大幅な拡大と、解析後から共有までの猶予期間の短縮化が見受けられた。一方、日本では、米国のようなデータ共有を義務化する具体的な共有方針はないものの、公的データベースがデータ共有システムを構築するとともに、個別研究プロジェクトが主体的に共有方針を検討するという特徴的な取組みが見出された。現在、このような調査・研究に基づき、データ共有に伴う倫理的・法的・社会的課題を整理し、また日米間におけるデータ共有システムを比較することで、実践的かつ持続可能なデータ共有システムの検討を推進している段階である。
2: おおむね順調に進展している
データ共有に伴う倫理的・法的・社会的課題に関する基本的な文献調査は遂行できており、これを踏まえた形で、国際的なデータ共有方針、及び、米国と日本のデータ共有方針に関する検討を予定通り推進できているため、本研究は、おおむね順調に進展していると考える。
次年度は、欧州のデータ共有方針とその実態の分析、及び、日米欧のデータ共有システムの比較について検討を深める予定である。さらに、最近、国際的に注目され始めている、ゲノム研究への「e-governance」の導入に関しても、現地訪問調査を軸として調査を進める予定である。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
医薬ジャーナル
巻: 50 ページ: 55-58
Life Sciences, Society and Policy
巻: 10 ページ: 4
10.1186/s40504-014-0004-9