研究課題/領域番号 |
25860382
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
服部 稔 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 特任助教 (10584683)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ロボット支援手術 / da Vinci surgical system / 内視鏡外科手術 / 医学教育 |
研究実績の概要 |
我々は独自に開発した内視鏡外科手術技術評価システム HUESAD(Hiroshima University Endoscopic Surgical Assessment Device)を用いて,空間認知能力,手先の器用さ,性格特性が内視鏡外科手術に必要なことを明らかにしてきた。平成26年度はロボット支援手術に必要な認知心理学的能力を検討した。ロボット支援手術技術評価には,平成25年度の研究で妥当性が確認されたdV-trainerを用いた。 まず,術者の空間認知能力によってロボット支援手術操作技術にどのような影響があるか検討した。学生20名を対象とし,空間認知能力試験で最も標準的な課題であるMental rotation testを実施した。 その後, HUESADとロボット支援手術シミュレータであるdV-trainerの4課題を実施した。その結果,空間認知能力の高い者は低い者と比較してHUESADのVisual spatial abilityの成績が有意に良好であった。これは我々の先行研究とも同様の結果であった。またdV-trainerではすべての課題の成績に空間認知能力の影響は認められなかった。従って,ロボット支援手術操作能力は,通常の内視鏡科手術と異なり,空間認知能力の違いによる影響は少ないことを明らかにした。 次に,術者のメタ認知能力,Big five性格特性,手先の器用さによってロボット支援手術にどのような影響があるか検討した。外科医19名を対象とし,dV-tainerと認知心理学的能力との関連を検討した。本研究の結果,術者のメタ認知能力はdV-trainerの成績と強い正の相関があることが認められた。Big five性格特性との間に有意な関連は認められなかった。また手先の器用さと正の相関がみとめられた。 今後は平成26年度に得られた結果をもとに,ロボット支援手術に必要な認知心理学的スキルを評価し,個人の適正を評価する。不得手と判断された者に対して認知心理学的スキルを向上させるトレーニングを実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では妥当性を証明したdV-trainerを用いてロボット支援手術に必要な認知心理学的スキルを検討することが目的であった。そこで我々は術者の空間認知能力・メタ認知能力・手先の器用さ・Big five性格特性など多岐にわたる項目とロボット支援手術シミュレータの成績を検討した。また医学部学生だけでなく外科医を対象とし,外的妥当性の高い実験を実施することができたと考えられる。また得られた結果を国際・国内論文に投稿した。 したがって,おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度ではロボット支援手術に必要な認知心理学的スキルを評価し,個人の適正を評価する。また不得手と判断された者に対して認知心理学的スキルを向上させるトレーニングを実施することを目的とする。まず,前年度で明らかになったロボット支援手術技術に関する認知心理学的スキルをまとめ, 認知心理学トレーニング法を開発する予定である。 次に認知心理学的スキルの得点を用いてロボット支援手術技術の成績を統計学的に予測する。そこで不得手と判断された者を 2 群にランダマイズし,ランダム化比較試験(RCT)を実施する。認知心理学的トレーニングを行った群が有意に dV-trainerの成績が向上している時,トレーニングの効果ありとみなす予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として,実験が順調に進展したため,ロボット支援手術のための消耗品の購入が予定よりも少なかったことがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画として,英文校閲費用,学会参加のための旅費として使用することを計画している。
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