内視鏡外科手術では空間認知能力の必要性が明らかになっている。しかしロボット支援手術技術と空間認知能力のとの関係は未だ明らかではない。そこで本研究では泌尿器科医のロボット支援手術技術と空間認知能力の関連を明らかにした。 ロボット支援手術シミュレータのdV-トレーナー(MDVT)の経験がある泌尿器科医20名と、ボランティア医学生24名を対象に実験を行った。dV-trainerに内蔵されたスコアリングアルゴリズムによってロボット支援手術技術を評価した。空間認知能力の評価にはmental rotation testを用いた。mental rotation testは空間認知能力を評価する最も妥当性の高い試験である。医学部生ボランティアは比較的難易度が高いタスクにおいて,空間認知能力とロボット支援手術技術に有意な関連が認められた。その一方で,泌尿器科医のグループのすべてのタスクのためにそれらの間に有意な相関は認められなかった。 本研究の結果は、医学部生ボランティアの空間認知能力と基本的なロボット支援手術用のスキルとの間に有意な相関があったのに対し、泌尿器科医の空間認知能力の違いは基本的なロボット支援手術のスキルの利得に影響を及ぼさないことを明らかにしている。これはロボット支援手術の特徴である,2台のカメラにより体内の解剖学的な構造を3次元立体映像として得ることができ、多自由度鉗子により人間の手のような複雑な動きも可能となっていることに由来しているものと考えられる。
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