はじめに:医療職の職能教育課程における教育現場では臨床場面を想定した様々な教育方法を導入している。しかし、学生にとって実際の患者イメージは掴みづらく、臨床場面で経験する緊張感や現実感を経験することは困難である。本研究は患者講師による学内教育が学生に及ぼす効果について調査し、「患者講師による学内教育」という新たな教育方法を探り、患者講師による講義や実技体験を盛り込んだ学内教育の反復実施が学生に及ぼす教育的効果について明らかにすることを目的として実施した。 対象:それまでの臨床実習はほぼ見学のみで臨床実習経験が乏しい2~3年次の学生とした。 方法:患者講師による招聘授業前に映像を盛り込んだ頸髄損傷、脳卒中に関する講義を行い、当日実施する理学療法評価項目を提示した。当日は、医療を受ける立場からそれまでの体験を通じて感じたことなどを講義形式で話して頂き、その後、理学療法評価の実技を実施した。講義終了後、「そう思う」「ややそう思う」「あまりそう思わない」「そう思わない」の4段階評価を用い、学生に対するアンケート調査(無記名式)を実施した。なお、質問項目は1)患者との関係性に関する設問5項目、2)実践場面を意識した設問5項目、3)臨床力獲得に関する設問6項目、4)学習態度に対する内省に関する設問3項目の合計19項目とした。 結果:患者講師による招聘授業を反復実施することにより、臨床力獲得に関する設問の「 必要な技術の修得ができた」と回答した学生が特徴的に増加していた。 考察:疾患を越えた基本的な理学療法の修得に繋がり、臨床場面を想定したより実践的な理学療法学教育が展開できているのではないかと考える。 なお、最終年度は収集したデータの分析と学術論文作成および論文の投稿を行った。
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