研究課題/領域番号 |
25860392
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
村上 元 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (70613727)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 主要組織適合遺伝子複合体 |
研究概要 |
昨年度の成果とし、申請書で掲げた3つの課題のうち ①薬物依存が報酬系脳部位に発現するMHCIに与える影響を自己投与システムで調べる。 ③分子機構を調べる。 の2つを成し遂げることに成功した。①では薬物依存の簡易的方法である強制投与法による予備実験から、コカイン依存のメカニズムとしてコカインにより報酬系の中枢である腹側被蓋野のドーパミン細胞でMHCIが減少することが考えられた。本課題では、我々が新規開発した自己投与システムを用いて作製したコカイン依存マウスでも腹側被蓋野におけるMHCIの減少が確認され、その機構がコカインの投与方法によらない現象であることが確認できた。③ではコカイン依存において報酬系回路の中枢である腹側被蓋野のドーパミン細胞への入力信号が増強されることがしられている。従ってMHCI欠損型マウスではMHCIの機能である神経結合の苅込みが欠損し、ドーパミン細胞への入力が更に増強され、薬物依存がより強くなることが考えられる。そこで本課題では自己投与システムを用いてコカイン依存マウスを作製し、そのドーパミン細胞への入力信号を電気生理学的手法を用いて計測をおこなった。その結果、信号伝達強度のコカインによる増加が野生型マウスに比べMHCI欠損型マウスではより大きくなっていることを明らかにした。この結果は、MHCI欠損型マウスにおけるコカイン依存増進の分子機構を示すとともに、腹側被蓋野のドーパミン細胞に発現するMHCIが依存に深く関わることを示す重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①の“薬物依存が報酬系脳部位に発現するMHCIに与える影響を自己投与システムで調べる”ならびに③の“分子機構を調べる”は共に期待通りの結果を得ることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本実験は申請書の計画通りにおこなう。すなわちMHCIを強制発現することで薬物依存を解消する全く新規の遺伝子治療法を自己投与システムを用い検討する。発現させる脳部位は報酬系の重要な部位であり、コカインによるMHCIの発現抑制が唯一観測された部位である中脳腹側被蓋野とする。強制発現には神経細胞での長期の安定発現と免疫応答を引き起こさないことから近年遺伝子治療で着目されているアデノ随伴ウィルスを用いる。具体的にはMHCI遺伝子とその上流にドーパミン細胞特異的に発現するチロシン水酸化酵素のプロモーターを組み込んだアデノ随伴ウィルスをマイクロインジェクション法により腹側被蓋野に投与し、腹側被蓋野のドーパミン細胞特異的にMHCIを発現させる。また対照群としてMHCIの代わりに蛍光タンパク質であるeGFPを発現させたマウスを作製し、依存の程度を自己投与システムを用い比較評価する。現在MHCIを強制発現させるアデノ随伴ウィルスベクターの作製が終わり、今年度野生型雄マウスに投与しコカイン依存への影響を調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度分の実験計画を遂行するため。 マウスの管理費、コカイン自己投与、ウィルスの微量注入、その評価実験にかかる消耗品費に用いる。
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