本研究では、不安定プラークを特異的に検出できるリポソームを用い、危険な動脈硬化巣を体外から検出する診断法の開発を目的としていた。不安定プラークでは、細胞外マトリックス分解酵素が発現していることを利用し、基質となるタンパクを内包化したリポソームを用い、より鋭敏に不安定プラークを検出することができるのではないかと考えた。 細胞外マトリックス分解酵素の基質となる蛋白を作成し、その組み換えタンパクに、SH基を利用して、蛍光基と消光基を標識することを考えた。作成時には、蛍光基と消光基のFRETにより蛍光が消光し、細胞外マトリックス分解酵素により基質が分解されることにより、蛍光基と消光基の位置が変化し、FRETがなくなるため、蛍光基の蛍光を検出できるようになると考えた。また、その蛋白を動脈硬化巣へ高く集積するリポソームへ内包化することにより、より精度高く動脈硬化巣へ到達させ、より細胞外マトリックス分解酵素を多く発現している場所の検出を可能にできると考えた。 細胞外マトリックス分解酵素の基質となるリコンビナント蛋白の作成が上手くいかず、想定よりも時間を要した。また、作成したリコンビナント蛋白への蛍光基と消光基の修飾に難渋し、かなりの時間を要した。また、FRETによる消光を認めることができなかった。代替案として、蛍光修飾されたコラーゲンを使用することを当初は検討していたが、動脈硬化巣へ多くの蛍光が取り込まれるため、細胞外マトリックス分解酵素による蛍光の減少を確認することは困難であった。 現状では、より良い代替案の提示は出来ず、研究期間も終了したが、引き続き、不安定プラークを特異的に検出できる方法の研究を行いたいと考えている。
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