研究課題/領域番号 |
25860395
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
松本 健次郎 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (10406770)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 温度感受性受容体 / TRPM2 / 内臓痛 / 消化管炎症 / ヒト検体 |
研究実績の概要 |
温度感受性受容体の中でも体内温度付近(36℃以上)で活性化するTransient receptor potential melastatin 2 (TRPM2)に着目し炎症性腸疾患患者および、その疾患モデル動物におけるTRPM2の機能と変化について検討した。2年目の成果として、遺伝子欠損動物を用い、リポ多糖刺激による、マクロファージからの炎症性サイトカイン、ケモカインの放出が遺伝子欠損動物では抑制されることを明らかにした。さらに細胞内情報伝達機構について検討を行った。 さらにTRPM2と炎症性腸疾患の主症状の1つである内臓痛との関連を検討するため、TRPM2遺伝子欠損動物を用いて内臓痛覚過敏とTRPM2の関連性を検討したところ、消化管炎症による内臓痛覚過敏状態が、遺伝子欠損動物では抑制されることを明らかにした。これにより1年目のラットを用いた薬理学的検討、TRPM2遮断作用が報告されているエコナゾールの実験結果を確認することができた。 最終年度はTRPM2遺伝子改変動物を用いてTRPM2と消化管炎症、内臓痛の関与について検討を進めていく計画である。これまでに、ヒト大腸においてTRPM2はセロトニン陽性細胞に発現していることを明らかにしているが、セルソーティングの手法を用いて、マウスにおいてセロトニン陽性細胞を回収し、野生型、遺伝子欠損動物において、TRPM2作用薬に対する反応性の違いから、TRPM2のセロトニン陽性細胞における機能について明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目以降の大きな課題であった、マウスにおけるTRPM2の局在については明らかにすることができなかった。国内外の学会参加により情報収集を行ったが、TRPM2特異性の高い抗体はなく、検出が非常に困難であることが明らかとなった。 しかし2年目では遺伝子欠損動物を使用した実験を軌道にのせることができ、TRPM2の消化管炎症における関与を明らかにすることができた。さらに消化管炎症時の内臓痛覚過敏におけるTRPM2の関与を証明することができたことも大きな成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目における、遺伝子欠損動物を用いた炎症性サイトカイン、ケモカイン、細胞内情報伝達機構検討から得られたデータから、TRPM2チャネルによる消化管炎症制御のメカニズムを検討する。病態モデルマウスを用いて、TRPM2チャネルの活性化、活性化後の炎症応答に関与する因子について作用薬や拮抗薬、阻害薬を用いて検証する。さらにセルソーティングの手法を用いて、マウスにおいてセロトニン陽性細胞を回収し、野生型、遺伝子欠損動物において、TRPM2作用薬に対する反応性の違いから、TRPM2のセロトニン陽性細胞における機能について明らかにしていく。最終年度ではさらに消化管炎症関連大腸がんにおけるTRPM2の関与ついても検討を行う。研究成果をまとめ、論文(2報予定)や学会発表を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体探索のための経費を予定していたが、入手可能なTRPM2抗体において特異性が高いものがないことが明らかとなった。そのため抗体の経費が削減された。 またTRPM2遺伝子欠損動物の繁殖が軌道にのったため、動物の経費も予定より少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は動物、各種選択的作用薬、拮抗薬の他に、フローサイトメトリー関連の試薬も購入予定である。 また成果発表のための英文校正、海外学会1回、国内学会3回を予定している。
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