研究課題/領域番号 |
25860398
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
森谷 昇太 東京医科大学, 医学部, 助手 (30634935)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多発性骨髄腫 / オートファジー / プロテアソーム / ボルテゾミブ / 小胞体ストレス / マクロライド / クラリスロマイシン / ミエローマ |
研究実績の概要 |
多発性骨髄腫は難治性造血器腫瘍であり、現在プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(BZ)が臨床使用されている。これまでに申請者らは、骨髄腫細胞株において①BZがオートファジーを誘導し、②オートファジー阻害活性を持つクラリスロマイシン (CAM)を併用することで小胞体ストレス負荷の増大を介した殺細胞増強効果が得られること、さらに、③BZ+CAM同時添加により異常タンパク凝集体であるアグリソームの形成が示唆される知見を得たことを報告してきた。 アグリソームは不良タンパクの細胞内蓄積に対して“細胞保護的”に形成されると考えられており、この形成にはヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)が必須であることが報告されている。そこで本年度では、BZによってユビキチン-プロテアソーム系を、CAMでオートファジー-リソソーム系を、さらにHDAC6阻害活性を有するボリノスタット(SAHA)によってアグリソーム形成を同時に阻害することで、MMに対してERストレス負荷増大による殺細胞効果の増強が得られるかを検討した。 各種骨髄腫細胞株にSAHA+BZ+CAM三剤同時添加培養を行うと、BZ+CAMよりも更に著しいERスレス負荷増大と殺細胞増強効果が観察された。抗ビメンチン抗体を用いた免疫染色法では、BZ+CAMで核膜周囲へのアグリソーム形成が示唆されたが、これはSAHAを同時添加することで有意に抑制された。同様にHDAC6 siRNAによるノックダウンでもSAHA添加時の上記の現象が全て再現された。 以上より細胞内タンパク質分解機構およびアグリソーム形成を効率的に遮断することは、骨髄腫細胞株のストレス負荷を増大を伴う殺細胞効果の増強がが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ボルテゾミブとマクロライドの併用により小胞体ストレス負荷増強を伴う骨髄腫細胞株の殺細胞作用の増強効果が認められた。また、ボルテゾミブとマクロライドとボリノスタットの三剤併用においても更に効率的な殺細胞効果の増強が認められた。
仮説および交付申請書に記載した計画通りにほぼ進んでおり、本研究は「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
骨髄腫細胞は生体内ではストローマ細胞などとの直接的な細胞間接触およびストローマ細胞が産生する因子の作用を受けて増殖・分化するが、これらは治療抵抗因子もしても作用することが知られている。本年度は動物実験や臨床応用を目指した基盤形成を進めるために、ストローマ細胞との共培養による微小環境への検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の主な支出品目は細胞培養や実験に必須なプラスチック消耗品類や、培地、および各種解析試薬である。これらすべてを支出した後に直接経費残金3円が生じた。
本研究で日常的に使用する最も安価な消耗品は培地(単価約1000円)であるが、現状の残金では購入費に充てることが不可能であり、次年度繰越金とすることが適切と判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金は次年度予算と合算し、消耗品購入費に充てる予定である。
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