研究課題/領域番号 |
25860401
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
内海 孝信 東邦大学, 医学部, シニアレジデント (80594275)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腎癌 / ケモカイン受容体 / ケモカイン / CXCR3 / CXCL10 |
研究概要 |
淡明細胞型腎細胞癌の手術検体を用いて、ケモカイン受容体CXCR3(CXCR3及びCXCR3A、CXCR3B)及び対応するケモカイン(CXCL9及びCXCL10、CXCL11)が腎癌腫瘍部で正常部に比べて有意に高発現していることを確認した。臨床情報に関する検討では、手術時有転移症例でCXCR3が有意に発現が高くなっていることを確認した。また、CXCR3A/CXCR3Bの比が手術時有転移症例で有意に高くなっていることを確認した。 腎癌細胞株(ACHN及びCaki-1、786-O)を用いて、CXCR3のリガンドであるCXCL9及びCXCL10、CXCL11が細胞株の増殖能及び遊走能、浸潤能に与える影響を検討した。CXCR3の発現(及びCXCR3A/CXCR3Bの発現比)が最も高い786-O株でケモカイン反応性が最も高かった。リガンドの中ではCXCL10作用時に最も遊走能が上昇したため、以降の実験はCXCR3/CXCL10系の解析に実験を集中させた。CXCL10作用時に786-O株の遊走能は有意に上昇し、CXCR3の中和抗体を用いて阻害することができた。また、浸潤能に関しても同様の現象が確認された。以上より、遊走能や浸潤能の上昇は、CXCR3/CXCL10系を介して起きていると考えられた。 CXCR3/CXCL10系が関与する遊走能や浸潤能の上昇の機序に関して、下流のシグナルを検討した。786-O株へCXCL10作用させると、RhoAのリン酸化が亢進することがWestern blotにより確認された。また、CXCL10作用後の786-O株の培養液上清にpro/active MMP-9の発現がWestern blotにより確認された。 CXCR3/CXCL10系を介して細胞遊走やプロテアーゼにより基底膜分解を誘導して転移形成プロセスの一因になっていると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたin vitroの実験を中心に行い、CXCR3/CXCL10系が腎細胞癌の転移機構に関与することを明らかにした。CXCR3/CXCL10系は腎細胞癌の細胞株786-Oにおいて遊走能及び浸潤能の上昇に関与し、その下流のシグナル伝達では遊走能はRhoAの活性化、浸潤能はMMP-9の分泌が関与していることも明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の結果を基に、ヌードマウスを用いたin vivoでの機能の研究に移行する予定である。標的となるCXCR3A 及びCXCR3B について高発現株と低発現株をを作成し、Xenograftでの機能解析、あるいは尾静脈に静注など行い転移解析などを行う。 また、pericyte や血管内皮細胞などの微小環境を構成する因子との関連性を検討する。さらに、CXCR3の中和抗体またはアンタゴニストを用いて、ヌードマウスでの抗癌治療の反応性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
腎癌細胞株におけるoverexpression系の構築に関する実験に時間がかかっており、当初購入予定であった試薬の購入が延期されたからである。 平成26年度予定のin vivoの実験においてもoverexpression系細胞株の作成は必須となるため、継続してその実験を行う。平成25年度に購入延期された試薬も購入する。
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