平成25年度の研究で、CXCR3AおよびCXCR3Bの発現が腎細胞癌の転移に関与し、CXCR3/CXCL10系シグナルが腎細胞癌の転移・進展に関与することを明らかにした。CXCR3のリガンド(CXCL9およびCXCL10、CXCL11)の中では、CXCL10投与時に最も機能が上昇した。CXCR3A/CXCR3Bの発現比が高い腎細胞癌患者は手術時の有転移症例で有意に高く、CXCR3A/CXCR3Bの発現比が高い腎癌細胞株786-OにおいてCXCL10を添加することによって遊走能および浸潤能がより亢進することを確認した。 平成26年度の研究で、CXCR3AおよびCXCR3Bとリガンドを共有しケモカイン・クロストークするCXCR4の発現が腎細胞癌患者の手術検体の腫瘍部で亢進しており、正常部では発現していないことを確認した。さらに、CXCR4に対応するリガンドのCXCL12が腎細胞癌腫瘍部では発現せずに、正常部で発現していることを確認した。腎癌細胞株786-Oを用いた機能解析では、CXCL10とCXCL12を混合して添加することにより遊走能がそれぞれの単独投与時よりも上昇することを確認した。 平成27年度の研究で、転移性腎細胞癌患者の血清を用いて、初回スニチニブ治療患者において、CXCL9およびCXCL10が治療開始後に一時的にsurge様上昇を認めるが、治療に反応して低下し、多くの患者で病状の進行とともに上昇する傾向があることを確認した。転移性腎細胞癌患者の治療を反映するバイオマーカーとしての可能性を検証した。
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