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2013 年度 実施状況報告書

2型糖尿病におけるアポリポ蛋白A‐Iの近位尿細管再吸収障害進展機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25860414
研究種目

若手研究(B)

研究機関北里大学

研究代表者

黒崎 祥史  北里大学, 医療衛生学部, 助教 (20602030)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードApo A-I / Cubilin / インスリン抵抗性
研究概要

1. CubilinとApo A-Iの結合に関する解析をELISA法の原理を応用して行った。腎皮質から可溶化膜タンパク分画を採取し(Cubilinを含む)、これをELISAプレートに固定化した。そこへ、Apo A-Iおよび酸化修飾Apo A-I(マロンジアルデヒド修飾)を添加してパラホルムアルデヒドで固定した後にApo A-I抗体にて検出した。Apo A-Iに対して、酸化修飾Apo A-Iは腎皮質膜タンパク(Cubilin含む)に対する結合が著しく低下した。また、Apo A-Iの酸化修飾時にタンパク質重合阻害剤であるアミノグアニジンを添加したところ、Apo A-Iの重合を阻害するとともに、腎皮質膜タンパク(Cubilin含む)との結合低下を抑制した。このことは、Apo A-Iの酸化修飾と重合による立体構造の変化がCubilinとの結合を低下させることを示唆する。また酸化ストレスが尿細管におけるApo A-I再吸収障害に関与することが示唆された。
2. F9細胞にレチノイン酸(RA)とジブチルサイクリックAMP(Bt2cAMP)を添加することでCubilin高発現細胞に分化させ、蛍光標識Apo A-Iおよび酸化・糖化Apo A-Iを細胞に添加することで結合および取り込みを確認するつもりでいるが、現在はF9細胞の培養および分化の条件設定に時間を要している。今後、フローサイトメーターと蛍光顕微鏡でCubilinの発現を確認する予定である。
3. 4週間の高脂肪食(HFD)負荷ラットにおける腎Cubilin発現および尿中Apo A-I濃度を測定するつもりであるが、現在はコントロールラット、HFDラットのサンプリングを行った。また、腎保護薬テルミサルタンを投与した群について、サンプリングを開始している。現時点で、HFDラットはインスリン抵抗性の傾向にあること、体重にはあまり変化が見られないことが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

1. ELISA法によるApo A-IとCubilinの結合の実験に関して、Cubilinの精製に時間を要した。Cubilinの精製は、Cubilinと結合能を有するアルブミンをカラムに固定化して、アルブミンと結合したCubilinの回収を行ったが、莫大な時間を要する割にごく微量しか回収できず、ELISAに用いるのに充分な量は精製できなかった。そこで腎皮質可溶性膜画分(Cubilin)をプレートに固定化することとなった。実験により、CubilinとApo A-Iの結合能を確認できたが、Cubilinを精製することでより説得力のあるデータとなる。しかしながら、今後の実験で細胞を使用して結合を確認することでCubilinとApoA-Iの結合は評価できることより、ELISA法による結合能の解析は、現象を確認するに留めることとした。
2.F9細胞の培養・分化条件の設定に想定以上の時間を要している。現在はCubilin発現を確認すると同時に、細胞の増殖の速度や細胞周期の確認を行い、最適な実験条件を検討している。条件設定が終了すれば実験モデル自体はシンプルであり、早期にデータを得ることができると考える。
3.動物実験に関しては、平成26年度で行う予定であったが、細胞実験の進捗状況が遅れている分、平成25年度に実験を一部進めた。そのため、平成26年度はサンプリングする動物数が半分以下となり、予定よりも早く進行している。サンプルが揃い次第、各種サンプルの測定を行うつもりである。

今後の研究の推進方策

1.Cubilinに対するApo A-Iの結合が、酸化修飾により低下することが確認できたが、細胞による結合能の実験がより効果的であり、また細胞の条件が設定されれば容易に可能であるため、CubilinとApo A-Iの結合能は、細胞を用いた実験で詳細なデータを取得する。
2.F9細胞の分化条件(レチノイン酸濃度、添加時間)を設定し、Cubiin発現をフローサイトメータおよび蛍光顕微鏡で確認する。Cubilin高発現細胞に蛍光標識Apo A-Iを添加して、Cubilinとの結合を確認する。また、蛍光標識Apo A-Iに対して、非標識Apo A-I、酸化Apo A-I、糖化Apo A-Iを添加し、蛍光標識Apo A-Iと競合させることでその結合力を評価する。また、細胞内取り込みを同時に確認する。CubilinとApo A-Iの結合は、ホルマリン固定後にフローサイトメータを用いた解析を行うことで評価できるため、同時に行う予定である。
3.動物実験では腎保護薬投与群のサンプリング(血漿、尿、腎皮質)を継続して行う。同時に、経口ブドウ糖負荷試験(インスリン抵抗性試験)を行う。また、サンプリング終了後は、腎皮質中Cubilinおよび取り込まれたApo A-Iのタンパク発現、mRNAをウエスタンブロットおよび定量PCR法で確認する。また尿中Apo A-I濃度を市販のELISAキットで測定する。同時に、血中脂質項目(総コレステロール、HDL-C、トリグリセリド、遊離脂肪酸)をはじめ、インスリン濃度、アディポサイトカイン(TNF-α、レプチン、アディポネクチン)を測定する。測定方法は、市販の各種生化学測定試薬やELISAキットを用いて測定する。

次年度の研究費の使用計画

F9細胞のCubilin高発現細胞への分化を行う実験について、大幅な実験の遅れが生じたことによる。F9細胞をCubilin高発現細胞へ分化させる条件が決定しなかったため、想定していた培養関連試薬およびピペットなどの消耗品の使用が生じなかった。また、Cubilin高発現細胞とApo A-Iの結合を評価するためにフローサイトメータと蛍光顕微鏡を使用する予定であったが、フローサイトメータに使用するシース液や蛍光顕微鏡での免疫染色関連試薬の使用が生じなかったため、予定より使用額が少なかった。
F9細胞のCubilin高発現細胞への分化が可能となりそうであるため、今後は細胞培養関連試薬およびピペット等の消耗品を追加購入するつもりである。また、Cubilin高発現の確認およびCubilinとApoA-Iの結合能の解析に関して、フローサイトメータと免疫染色(蛍光顕微鏡)を使用するため、それら消耗品の購入に使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Semiquantitative analysis of apolipoprotein A-I modified by advanced glycation end products in diabetes mellitus.2013

    • 著者名/発表者名
      Yoshifumi Kurosaki, Tomoaki Tsukushi, Shinichi Munekata, Tohru Akahoshi, Tatsumi Moriya, Zensuke Ogawa.
    • 雑誌名

      Journal of Clinical Laboratory Analysis

      巻: 27 ページ: 231-236

    • DOI

      10.1002/jcla.21591

    • 査読あり
  • [学会発表] Expiratory muscle and upper airway muscle activity during reverse sniff.2013

    • 著者名/発表者名
      Tsuyoshi Ichikawa, Masanori Yokoba, Akira Takakura, Masahiko Kimura, Naohito Ishii, Michiko Kimura, Mikiko Ishihara, Yoshifumi Kurosaki, Yuya Yamada, Yuko Mitsui, Atsuhiko Matsunaga, Noriyuki Masuda, Masato Katagiri.
    • 学会等名
      The 18 th Congress of Asia-Pacific Society of Respirology
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      20131111-20131114
  • [学会発表] 腎症前期糖尿病ラットの腎皮質におけるHypoxia inducible factor α 発現について2013

    • 著者名/発表者名
      黒崎祥史、山田優也、土筆智晶、横場正典、市川毅、宇治橋善勝、池永秀樹、青木芳和、市川尊文、竹中恒夫、片桐真人、石井直仁
    • 学会等名
      第60回日本臨床検査医学会学術集会
    • 発表場所
      神戸国際会議場(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      20131031-20131103
  • [学会発表] 健常者における経鼻的持続気道陽圧呼吸による横隔膜の動きの変化に対する体位の影響について2013

    • 著者名/発表者名
      山田優也、横場正典、黒崎祥史、市川毅、土筆智晶、宇治橋善勝、市川尊文、石井直仁、片桐真人
    • 学会等名
      第60回日本臨床検査医学会学術集会
    • 発表場所
      神戸国際会議場(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      20131031-20131103
  • [学会発表] Angiotenin-converting enzyme inhibition curbs tyrosine nitration of mitochondrial proteins in the renal cortex during the early stage of diabetes mellitus in rats.2013

    • 著者名/発表者名
      Naohito Ishii, Pamela K. Carmines, Masanori Yokoba, Hideki Ikenaga, Tsuyoshi Ichikawa, Yuya Yamada, Yoshifumi Kurosaki, Tomoaki Tsukushi, Yoshio Kodera, Masamichi Oh-Ishi, Yoshikazu Aoki, Tadakazu Maeda, Takafumi Ichikawa, Tsuneo Takenaka, Masato Katagiri.
    • 学会等名
      Human Proteome Organization 12th Annual World Congress
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      20130914-20130918
  • [学会発表] 腎症前期糖尿病ラットの腎皮質における酸化ストレス抑制と組織レニン・アンジオテンシン系の関連について2013

    • 著者名/発表者名
      石井直仁、黒崎祥史、山田優也、横場正典、市川毅、土筆智晶、池永秀樹、青木芳和、市川尊文、竹中恒夫、片桐真人
    • 学会等名
      第53回日本臨床化学会年次学術集会
    • 発表場所
      あわぎんホール(徳島県徳島市)
    • 年月日
      20130830-20130901

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公開日: 2015-05-28  

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